早稲田日本語教育実践研究 第7号
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4早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/3―63.「開放性」を視野に入れて CJL は「多様性」「主体性」「開放性」を教育活動の特徴としています。しかしながら,番目の特色とされ,また,求められているものとされています。他箇所や外部との連携はもちろん必要なことです。そのうえで,さらに CJL を「留学生に日本語を教えてから次の場所へ送り出す機関」としてではなく,連続性を意識した「ことばの学びの中継点」とすることが「開放性」の確保であると説かれています。また,日本人学生と留学生を分断せず,お互いがお互いを共に学ぶ者として認識できれば,自ずとグローバルな大学となれる,この点においてもこの「開放性」が重要な論点となると言えるでしょう。「多様性」と「主体性」は具現化されつつあるものの「開放性」に関しては,まだ不十分な点が残り,今後の重点課題とされているのが現状です。この指摘は,2018 年第 6 号の「センター最前線」にも見受けられるものです。CJL として,今後,どのようにすればこの点を視野に入れながら,様々な課題を解決の方向に持っていけるのか,考えてみたいと思います。3-1.初級学習者の増加への対応 まず,留学生受け入れのおおまかな傾向を見てみましょう。CJL のプログラムには総合科目群とテーマ科目群があり,前者は四技能をバランスよく学習するための科目群です。その科目群のなかでも「総合日本語」は初級から上級前半(レベル 1 〜 6)の学習者を対象に,標準化されたシラバスと教材をもって運営されており,CJL の基盤を成す規模の大きなプログラムといえます。表 1 はその総合日本語を履修する学習者数の推移を見たものです。徐々にではありますが,増加する傾向は依然として見られますし,なかでも,1 レベル,2 レベルといった初級の学習者の増加が顕著であることが見て取れます。2018 年度に関しては,前年度に比して履修者数全体が減少していますが,これは表中にある総合日本語 1 から 6 のレベル別科目以外に,会話クラスを新設したり漢字クラスを増やしたりしたことが影響しているようです。総合科目群全体の充実を図ったことにより,レベル別総合日本語以外のクラスを履修した学習者が増加したと考えられます。 初級の学習者の増加は,明らかに英語学位プログラムの増加と連動しています。今後,英語学位プログラム自体の増加,またプログラムで受け入れる留学生数の増加が見込まれるなか,CJL で学ぶ初級学習者の更なる増加は必至です。英語学位プログラムで来日する留学生のなかには,日本語学習の経験が全くないままクラスに入ることで,日本語学習に大変な苦労をするケースも少なくないようです。英語で学位が取得できるコースで学んでいても,日常生活では日本語が求められ,また留学生自身も日本語を学びたいと希望するのであれば,相応のプログラムと内容が必要になります。初級レベルの学習者と必要な日本語学習とをきちんと接続できるクラスとプログラムの充実が求められます。

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