早稲田日本語教育実践研究 第7号
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3センター最前線― 「開放性」から創出される接続を求めて―1.はじめに2.CJL の教育活動の概要と特色日本語教育研究センター所長 池上 摩希子早稲田日本語教育実践研究 第 7 号  日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下「CJL」)は 2018 年度には設立 30 周年を迎えました。その歴史を振り返れば,1884 年に初の留学生を受け入れ,以来,本学の留学生に対して継続して日本語教育を行っています。2011 年には学術院組織から離れて全学的な教育研究機関となり,早稲田大学における日本語教育を組織として一元的に担っています。全学の中長期目標として掲げられている「Vision150」によれば,2032 年には本学として 1 万人の留学生を受け入れ,共に学ぶことが目指されています。こうした状況を視野に入れ,本稿では,「センター最前線」として,「全学的」の意味を検討してみたいと思います。それによって,CJL が求められていること,また,CJL として目指すべきことがより明らかになると考えるからです。 本学には約 5,800 名の外国人学生が在籍していますが,2018 年秋学期には 2,331 名の留学生が CJL において日本語科目を履修しました。220 名のティーチングスタッフが週に約650 コマを運営することで,本学の日本語教育を支えています。CJL の教育活動やプログラムの詳しい内容については,直近の本誌,2018 年第 6 号「センター最前線」1)において紹介されています。そこでは,学習者,プログラム,教育スタッフといった三つの観点から見た,2017 年度の CJL の活動の具体的な概況がわかります。科目群と学習者に見られる「多様性」と学習者の主体性を重視する「主体性」は,CJL が継続して重要としている教育活動の特色と言えるでしょう。多様であることを,即ち学びの場としてリソースフルであることにつなげる必要があります。また,主体性を言うためには,それを支えるサポート体制を準備しておかなければなりません。こうした課題と向き合いながら,CJL は全学的な機関として日本語教育を展開してきました。 もうひとつ,教育活動の特色として掲げられているものに「開放性」があります。2016年第 4 号の「センター最前線」2)では,増加する留学生に対する全学の教育機関としては「多様性」と「主体性」に加えて「開放性」が求められるとの展開があります。これが 3「全学的」な教育機関であるために

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