早稲田日本語教育実践研究 第7号
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ルも同様です。そのような状況で,留学生の増加という要素も加わり,十分に対応しきれていないのが現状です。留学生の私生活や公共の場でのマナーなど実用的なサポートのためのシステム強化,人員増加などが課題となっています。 また,岡田さんから CJL に「今後,虹の会に期待する活動はどのようなことですか ?」という質問がありました。これを受け,舘岡教授は次のように答えました。舘岡教授: 虹の会が,留学生を手厚く支援してくれていることをあらためて認識し,感服しました。虹の会の皆さんにはすでに十分ご尽力いただいていると思います。同時に,人手が足りず,留学生の急増に対して,支援の量と質が追いついていない現実を実感させられ,大学としての課題であると認識しました。今後,日本の学生にももっと CJL の門戸を広げて,国際交流のバリューを提示し,量と質の両方の観点から支援内容の向上を目指したいと考えます。そのためにも貴重な協力者である虹の会の皆さんには,日本の学生,留学生双方が Win-Win の関係性を築き,支援してあげること,してもらうことが両立し,持続的に発展していただくことを期待いたします。 早稲田大学国際部長(当時)の黒田一雄国際学術院教授は,今後の大学の国際化と日本語教育のあり方について,次のように述べました。黒田教授: 留学生を,支援の対象とするだけでなく,逆に教えていただく対象としてお互いベネフィットを持って,双方から学び合えることが,大学全体にとっても重要だとあらためて感じました。 実は CJL 発足の大元には,戦前の国家建設を優先する時代から,早稲田大学が世界に貢献するビジョンを打ち出していたことがバックグラウンドとしてあるのです。その後,留学生が増加し,海外からの研究者の受け入れ,海外大学の日本校の増設,ICT 教育の普及などにより,本学に限らず,高等教育の国際化が進んでいるのが現状です。 「WASEDA VISION 150」の中でも掲げていますが,本学は 2032 年までに留学生を 1 万人に増やすこと,外国人の教職員を 2 割に増やすことを目指しています。さらに,海外からの研究者を積極的に受け入れることもトレンドになっています。 現在,東アジアからの留学生が 78% を占めますが,提携校からの交換留学生として,アメリカやヨーロッパからの留学生も増えてグローバル化が加速しています。半数の留学生は日本語で,残り半数の留学生は英語で授業を受けていますが,双方の学生に対応した柔軟な日本語教育のニーズも高まっています。 今後は,大学として,日本人との交流や就職対応の日本語教育にも力を入れていく考えです。本学が「世界大学ランキング」の言語分野で上位にいる要因として,日本語教育に注力していることが大きく影響しています。そうしたことも踏まえて,留学生のニーズ,日本の学生との共生,優秀な日本語教育者の教育に力を入れることで,CJL をより発展させ,最先端の日本語教育機関として成長し続けることが,本学の国際化の要になると捉えています。54早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/49―94

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