伊藤奈津美(日本語教育研究センター)岩下智彦(日本語教育研究センター),沖本与子(同),三好裕子(同),毛利貴美(同) 日本語教育研究センター(以下 CJL)では,CJL で日本語を学ぶ外国人留学生が自分の日本語レベルを判断する際の指標となる新たな客観テストの開発が必要となったため,2020 年度の完成と実施を目標に,オンラインのレベル判定テストを作成することになった。本研究では,テストを開発する過程で試作した問題の妥当性や改善点を検証するためにパイロット調査を行う。その分析結果は,2019 年度より実施予定の総合日本語科目を対象とした大規模調査の内容に反映する。 本研究では,パイロット調査として,CJL 総合科目群の入門日本語,総合日本語 1□5 レベルの学習者を対象に Course N@vi 上で語彙・文法のレベル判定テストを受験してもらう。調査はコーディネーターあるいは常勤教員が担当する 1□2 クラスで調査協力者を募る。調査時期は 1 月〜 2 月を想定し,各レベル修了程度の問題に解答できるかどうかを検証し,さらに問題ごとにレベル判定に有効かを分析する。分析結果から,試作した問題の妥当性や改善点を検討する。また,調査の結果の分析と並行し,2019 年度春学期実施予定の本調査に向けた準備を行う。 2018 年 10 月より,過去のレベルチェックテストおよび各レベルで使用している教科書などを参考にし,語彙・文法のテスト項目の作成に取り掛かった。当初,各レベル語彙 10 問,文法 10 問の全 120 問程度の項目作成を予定していたが,研究プロジェクト内で検討したのち,常勤教員からのフィードバックを経て,全 147 問の試作版レベル判定テストを完成した。さらに,調査対象として総合日本語 6 レベルを加えることとした。 2018 年 12 月には上述のレベル判定テストを入門日本語,総合日本語 1□6の調査対象クラスの Course N@vi 上に設置した。また,調査説明書兼同意書を作成し,英語・中国語に翻訳するなど,パイロット調査に向けた準備を行った。 冬休み明けの 2019 年 1 月 7 日より調査対象クラスの学習者に調査協力を呼びかけた。有効回答数は 96 名で,入門日本語(7 名),総合日本語 1(12)名, 総合日本語 2(17 名),総合日本語 3(8 名),総合日本語 4(20 名),総合日本語 5(14 名),総合日本語 6(18 名)であった。 分析の結果,α係数は 0.9 以上と十分な値でテストの信頼性が示唆された。一方で,項目分析の結果,ほぼ全員が正答できる項目や受験者能力の弁別性に寄与していない項目が散見され,一部項目修正の必要性が示された。47早稲田日本語教育実践研究 第 7 号 研究プロジェクト名 CJL で学ぶ学習者のためのレベル判定テスト開発研究代表者名研究メンバー設置主旨2018 年度活動計画2018 年度活動実績予算額研究報告290 千円
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