早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/43―44 3.学習活動のねらい4.プレゼンテーションのテーマの変遷5.学生の反応と今後の課題 本授業では,学生が自主的に学習することを求めている。学生が最も時間をかける作業はプレゼンテーションの準備であろう。カタカナ語は英語を語源にするだけではなく,和製英語,造語,フランス語+英語の組み合わせなどがあり,確認作業の必要がある。造語の場合,カタカナ表記である場合が多い。例えば,すでに日本人にはなじみのある「バツイチ」,これから活躍する 2020 東京オリンピックパラリンピックのマスコットの名前「ミライトワ」「ソメイティ」は,なぜ,どこから,その語が持ち上がったのかを調べ,映像と説明で紹介しつつ,日本語を通して,日本社会の流れに思いを寄せる。このように学生が個別に学習経験を積み,それぞれ知見を高めることによって,語彙力を伸ばしていこうというのが,本授業のねらいでもある。 プレゼンテーションで紹介するカタカナ語を,学生がどのようなフィールドで集めてくるか,について大別すると 2 つに分けられる。 1 つは,本授業開設当時から変わらず共通するもの。スーパーマーケット,コンビニ,新聞,雑誌(ファッション,料理)からとりあげられるカタカナ語である。 もう 1 つは,この数年で選ばれたフィールドで,移動した先(旅行先),移動中(通学中)で見かけたカタカナ語である。東京を離れて観光しながら,楽しい思い出とともに,東京とはちょっと違う言葉探しを楽しんでいる発表はじつに楽しい。また,移動中に乗る電車側面に書かれているカタカナの記号。それは車両の機能や種類を表している。地下鉄の「ホームドア」も今後根付くカタカナ語ともいえるだろう。見逃しがちな標示を調べるという作業は自律的行動として,歓迎したい。 1 学期を通して,多くのカタカナ語が学習対象となるため,「どんどん慣れて,面白くなっていく」「自分の国の食文化がこんなにカタカナ語で日本人の生活に馴染んでいるとは思わなかった。これからも頑張る」という学生と,語源の発音とカタカナ表記のギャップに最後まで苦労する,という学生がいる。 カタカナ語は言葉の時代性という影響を受けやすく,表記にも「揺れ」がある。学生と共に,教員もカタカナ語の生態をじっくり観察していくことが肝要と考える。(いとう ひろみ,早稲田大学日本語教育研究センター)44
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