早稲田日本語教育実践研究 第7号
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注早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/41―42 4.今後の課題 ①は,シュミレーション・ロールプレイである。これは,グループで病気や怪我をしたことを想定して,病院で診察を受け,薬局で薬をもらうという一連の行動をロールプレイとして実施するものである。病気や怪我の種類と症状,また病気や怪我に至った理由なども全てグループで相談し,ロールプレイを完成する。このロールプレイを行う前に,授業内で必要な語彙や表現を学び,毎回運用練習を行っている。だが,断片的な練習であるため,統合した練習としてこのロールプレイを実施している。 ②は,「心身ともに健康でいるためにはどうしたらいいか」というテーマのグループディスカッションである。これは,事前に授業内で学ぶのではなく,宿題として個々の学生が考え調べてくるものである。授業では,まずグループ内で各自が発表し,語彙や表現,内容を共有したあと,心身の健康を保つために一番重要なことを話し合い,各一つずつ決める。最後に,結果を発表しクラス全員で共有する。次回の授業で教師が全グループの結果をまとめ,新たな情報を追加したものを見て,再度語彙,表現,内容を全員で共有する。 ③は,授業内での様々な活動を通し語彙や表現を学習してきたあと,最後に行う冊子作成の活動である。これは,学期終了後も学生の手元に残り,必要な時に参照できるようになっている。まず,学生自身が知りたい事,調べたい事を決めるために,グループ内でできるだけ多くそれらを挙げ,KJ 法 1)により分類する。その結果を発表した後,教師により八種程度のテーマ,例えば「体の病気」「生活習慣」などに分けられる。次に,これらのテーマの中から学生が各自調べたいものを選択し,テーマ毎のグループを作る。そして,その中で話し合って個々の学生が調べるトピックを決め,各自が調べて A4 で 1 〜 2ページにまとめる。作成途中で各トピックに必要な内容,わかりやすさなどをグループ内でチェックし合いながら進め,語彙,表現を共有する。最後に一つの冊子として仕上げてから,各自発表し全員で冊子の内容を共有する。 本科目では多くの語彙や表現が出てくるうえ,漢語も多い。そのため,非漢字圏の中級3 レベルの学生にとってそれらを理解し運用することは,高いハードルとなっているだろう。漢字にはルビをふり,専門用語には英訳をつけているが,今後はさらに英訳と画像などの視覚情報も増やして,分かりやすくしていきたい。同時に,ピアラーニングの工夫や分からないことを質問しやすい環境作りなどもしていきたいと思う。  1) KJ 法は,川喜田二郎氏が考案したもので,出されたアイデアや意見をカード化し,同じ系統のものでグループ化することにより,整理をする方法である。(こいけ まり,早稲田大学日本語教育研究センター)42

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