早稲田日本語教育実践研究 第7号
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早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/39―40 3.分野別外来語学習の実例4.学生の反応 また,第 11 回に,学生は「私が出会った印象的な外来語」という題で,400 字程度の作文を提出する。添削・返却後,学生は,これをもとに一人ひとりスピーチをする。 「食べ物・飲み物」についての外来語の学習を例として紹介する。35 名が各自 3 語提出するので,全部で 100 以上の言葉が集まる。この中から特殊なものを除き,基本的な語を中心に,重複しないように 35 語を選び,学生たちに発表させている。料理用語はフランス語に由来するものが多いので,全体の三割ほどがフランス語由来,英語由来が三割,イタリア語由来・中国語由来がそれぞれ一割,残り二割がその他という傾向がみられる。 学生の半数以上が中国人だが,彼らはフランス語・ドイツ語などに由来する外来語はほとんど知らない。したがって,この分野の語彙にフランス語由来のものが多いことに非常に驚く。だが,その驚きは拒否反応ではなく,むしろ興味へと変わり,新しいことを発見した喜びにつながってゆくようだ。たとえば「カフェオレ café au lait」がフランス語由来で「ミルク入りコーヒー」であることを学生が発表した後,関連情報を補うようにしている。「オレ au lait」は「ミルク入りの」という意味であり,喫茶店のメニューなどで見かける「抹茶オレ」は「ミルク入り抹茶」である。このような説明により,それまで「オレ」という意味不明のカタカナでしかなかったものに意味が付与され,覚えやすくなるのではないだろうか。こうした情報を付け加えることで,学生たちの外来語への興味は深まり,知識も広がる。外来語は面白い,楽しいと思って学ぶうちに,自然に理解できる外来語の数も増える。 学生が提出する外来語は食品名・料理名が多いので,講師が作成・配付するプリントでは,広く「食」に関する外来語を補うようにしている。代表的なものを以下に挙げてみる。ファミリーレストラン,ファストフード,バイキング,メニュー,セルフサービス,テイクアウト,トレー,インスタント,レトルト,レシピ,グルメ,ベジタリアン,サラダバー,シュガーレス,ソフトドリンク,ダイエット,ソムリエ,パティシエ 最後に,学生授業アンケートから,学生たちの授業に対する主な意見を引用しておく。 ・外来語をとても詳しく説明してくれた。  ・テストのおかげで,外来語を覚えた。 ・様々な知識を得られ,とても面白かった。 ・英語やフランス語も学べた。 ・学生の発表の内容を先生が補ってくれたのがよかった。 ・たくさんの外来語を勉強した。初耳のこともあった。40表 3 講師が提示した「食」に関する外来語の例(せんば じゅんこ,早稲田大学日本語教育研究センター)

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