早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/35―36 4.学生の反応5.課題ことを行う。短歌を作る練習をしたのち実際に作る。その後は前述の俳句活動と同じような流れで活動。③ 詩:短い詩の紹介を行う(英語の対訳があるものを選び,両言語でプリント配布),これを理解,鑑賞したのち実際に短い詩を作る。その後は俳句,短歌の活動と同じ流れで進めていく。④ 俳句・短歌・詩のグループを作り,最後にどのような視点でこれを紹介していくのかを話し合って協働活動を行う。教室でグループ発表し,相互評価する。 以上が各分野での流れであるが,毎回なにがしかの課題を教室で行い,これを持ちよってグループ活動を行っていく。自分だけで創っていくのではなく,クラスメイトの作品や言葉の使い方,言葉のリズムや調子,感性に常に触れていくことができる環境が教室内で作られていく。ここに,一人ではなく教室に来て日本語を学ぶ大きな意味がある。 日本人でも,ある意味難しいと思われる俳句・短歌・詩をテーマにこのクラスを初級で設定した。不安はあったが受け身的な授業と違って毎回常になにがしかを生み出す活動を行うため,また,グループ活動でだれもが必ず一度は主役となって表現するという形態で行ったこの授業を,学生は楽しんでいた部分が多かった。 「日本語能力と感じることは別のことだ」というコメントは,一人一人の言葉のセンス,感性が豊かであることを実感し,臆することなく表現できる楽しさを示した言葉であった。自分が認められることが言葉を発する自信にも繋がった。「ことばが増えた」「季語の中にとても美しい表現がある」「同じものを見てきたのにぜんぜん作品が違った。面白かった」 「自分のペースで日本語を学べた」「自分の国の詩を紹介できて嬉しかった」など,一人一人の感想はバラエティに富んだものであった。 反面,「何を言っているのかぜんぜん分からない」「理解できない」「文法が分からないから大変だ」という声もあった。現代語の作品を紹介するようにしたが,教科書での学習とは違う予想もつかない日本語の出逢いに戸惑う様子も中には見られた。 初級としてはかなり挑戦的な活動であり,また学習者のレベルに開きがあるため,お互いに助け合っていくグループ活動がクラスでは必要になる。この活動で黙りがちになるときが多くなる学生にとっては非常に難しい授業となってしまう。レベル差があることをどのようにプラスとしていけるかが課題である。また紹介できる俳句・短歌・詩も限られてくるため,その選択をどのようにするのか,あるいはすべきではないのかなども考慮する必要がある。(えばら みえこ,早稲田大学日本語教育研究センター)36
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