早稲田日本語教育実践研究 第7号
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早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/23―30 な準備活動ができずに困惑している者がいる,(3)言語的な問題の少ない中級学習者や上級学習者でも,就職に向けた準備を計画的に行っている学習者が多くない,(4)大学が発信するキャリア支援に関する情報を十分に入手,理解している学習者が少ない,である。 一方,学習者からは,「①情報提供に関わる支援」「②就職活動の準備に関わる支援」「③就職活動のスキルに関わる支援」「④日本語支援」「⑤ネットワーク形成支援」「⑥その他」の 6 種の要望があることも確認された。そして,(1)日本語能力が不十分な日本語学習者に対する情報提供,(2)自身のキャリアについて自律的に考え行動できるようにするためのキャリア教育,(3)非正規学生に対する機会の拡充,(4)キャリア関連情報の情報リソースとなりうる人的ネットワーク形成支援といった 4 点の課題も見いだされた。 キャリア支援に関わる問題は,一般的に,キャリアセンターなどの専門機関が中心になって検討すべき課題であると考えられる。しかし,日本語学習者の場合はキャリア支援における日本語支援の比重が重く,日本語教育を看過しての支援は困難である。さらに,学習者の社会性や人間形成の育成を目的とした教育的観点から言えば,日本語教育においても,学習者のキャリア意識の形成それ自体を支援していく必要があると言える。本調査の結果から,就職活動に関する情報提供の方法や配慮,キャリアセンターなどの就職活動支援機関との連携,また,留学生活の早期から就職に対する意識づけを行うことの必要性が示唆された。付記 本調査は早稲田大学 2018 年度特定課題研究助成費の助成を受けている。謝辞  本稿において取り上げた留学生のキャリア意識に関する調査にご協力いただきました先生方,および学生の皆様に心より御礼申し上げます。参考文献内閣府(2016)「日本再興戦略改訂 2016―第 4 次産業革命に向けて―」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_zentaihombun.pdf(2018 年 9 月 20 日最終アクセス)日本学生支援機構(2017)「平成 29 年度外国人留学生在籍状況調査結果」http://www.jasso.go.jp/about/statistics/intl_student_e/2017/index.html(2018 年 9 月 20 日最終アクセス)(とらまる ますみ,早稲田大学日本語教育研究センター)(なかやま ゆか,早稲田大学日本語教育研究センター)(さいとう ますみ,山梨学院大学)30

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