(6)就職に関する情報収集など具体的な就職活動をしているか 初級では 29.8%,中級では 40.0%,上級では 74.4% となっており,上級学習者の多くが具体的な就職活動に取り組んでいることがうかがえる。これらの比率は,「(4)アルバイトやインターンシップの経験があるか」と似たような数値を示しており,日本での就職を希望する意志が強く日本語レベルが高い学習者ほど,アルバイトやインターンシップ,その他の準備をしていることがわかる。日本の企業や企業風土を知るため「インターンシップを計画している」学習者や,就職試験に備えて「キャリアセンターで面談を受けようと思う」「キャリアセンターのセミナーに出ようと思う」といった学習者も見られる。(7)学内の就職関連施設を利用したことがあるか 初級では 76.6%,中級では 80.0%,上級でも 62.8% の学習者が学内施設を利用していないことが明らかになった。質問(1)から(6)までの質問では,日本語能力レベル別の差が顕著に出ていたが,この質問は最もレベル差が少なかった。つまり,どのレベルの学習者も,キャリアセンターなどの就職関連施設を十分に利用していないということである。その理由としては,初級では,もともと日本での就職に対する強い志向性がない,あるいは「できれば日本で就職したい」という学習者でも,日本語能力が不足しているために情報が拾えないということが挙げられる。中級と上級では,まったく利用したことがない学習者と,キャリア面談を繰り返し受けている学習者,またはキャリアセンターなどが開催するセミナーに積極的に参加している学習者などとの二極分化の傾向が見られる。(8)進路選択のために大学の支援が必要だと思うか 初級では 44.7%,中級では 87.7%,上級では 65.1% の学習者が進路選択のための支援が必要であると答えており,質問(7)同様,この質問も,日本語レベルの別なく高い数値を示している。このように,支援の必要性を訴えながらも施設を利用していないということは,施設や支援についての周知が十分になされていないことを表していると言える。その理由としては,留学生向けの情報が少ない,または,情報があったとしても,日本語レベルが高くないため情報が収集できないといった理由が考えられる。なお,この質問に限り,「はい」と答えた中級学習の割合が最も高くなっているが,これは,日本や日本企業への就職意欲が高いにもかかわらず,中級学習者が日本語能力不足や日本語による情報過多などの理由により,十分な支援が受けられていないと感じていることを示している。3-2. 日本語レベル別傾向(1)初級学習者 初級学習者の傾向としては,「漠然としたキャリア意識」「キャリアに関する情報不足」「就職に向けた実質的活動への参加割合の低さ」などが挙げられる。初級学習者の日本語学習目的は,キャリア関連科目を履修していても,「趣味」から「就職」まで幅が広い。特に,自身の日本語能力と日本企業で必要とされている日本語能力の乖離に気づいている学習者は,日本でキャリアを積むことにこだわらず,海外企業で仕事をすることや,日本国内であっても,外資系企業での就職を希望する場合がある。一方,日本語の習得状況によって決めるという者もおり,選択しきれていない状況が観察できる。また,日本語による十分な情報収集が不可能であるため,就職活動とは何か,就職活動のスケジュールはど27ショート・ノート寅丸真澄・中山由佳・齊藤眞美/留学生のキャリア意識調査報告
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