では,①(39.5%),③(34.9%),②(27.9%),④(11.6%)の順であり,特に④が低い。①と②を合わせた数値が,初級では 35.6% なのに対して,中級と上級では,それぞれ66.2% と 67.4% と 6 割を超えていることから,中上級に進むに従い,日本語をキャリアに活かして,日本で仕事をしようという志向性が強まっていることがわかる。(2)本科目履修の目的は就職か 初級では,ビジネス日本語関連科目の履修の目的が就職であると答えている学習者が63.8% であるのに対して,中級では 81.5%,上級では 90.7% となっており,レベルが上がるにつれて就職という目的意識が強くなっていると言える。就職以外の履修目的としては,初級では「標準的な初級日本語科目では十分に学習できない語彙や文法を学びたい」「アルバイトをしたい」「日本語会話に慣れたい」「年上の人と話すための敬語を学びたい」「単位を取りたい」などの目的が挙げられていた。一方,中級では「アルバイトでのコミュニケーション能力を上げたい」「インターンシップに参加したい」という就職に関わる実利的な目的が観察された。上級では就職以外を挙げた学習者はきわめて少ないが,「多様な日本語が話せるようになる」のほか,「ただの趣味」という回答があった。(3)クラブやサークルに入ったことがあるか(現在所属している場合を含む) 初級では入ったことがある,または現在入っている学習者が 34.0% なのに対して,中級では 50.8%,上級では 65.1% となっており,上級になるほどクラブやサークルへの参加率が高まっていることがわかる。具体的に所属したクラブやサークルとしては,初級や中級では,国際交流サークルなど日本語学習や日本人と接触する機会がつくれるクラブやサークルが多いのに対し,上級ではスポーツやダンスなど趣味や楽しみのためのクラブやサークルへの参加が観察される。日本語能力が高まるにつれて,クラブやサークルに入る目的が日本語学習から自身の趣味や楽しみに移行している様子がうかがわれる。(4)アルバイトやインターンシップの経験はあるか 初級では 27.7%,中級では 53.8%,上級では 76.7% の学習者がアルバイトやインターンシップの経験があると述べており,(3)同様,それらの機会を得るには,日本語能力が必要であることが推測できる。就職に対する意識やモチベーションが高く,かつ,日本語能力の高い学習者がアルバイトやインターンシップを経験していると言える。また,初級学習者では,大使館のアルバイトや自国企業など英語,または母国語で仕事ができるアルバイト先が挙げられているのに対し,上級学習者では,日本語で仕事ができるアルバイトが選択されており,言語的な拘束がない。どのレベルにおいても接客業が多いが,日本語能力に応じてアルバイト先が変化していると考えられる。(5)将来の進路(就職・進学)のための勉強や活動の計画はあるか 初級では 29.8%,中級では 41.5%,上級では 48.8% の学習者が勉強や活動の計画があると述べており,特に,中級と上級の割合差は他の質問より小さい。但し,初級や中級では,日本語能力試験(JLPT)やビジネス日本語能力テスト(BJT)などの資格試験の準備を計画している学習者が多いのに対し,上級では,資格試験などの実利的な日本語学習のみならず,専門の学習や活動をするなど,日本語を越えた学習や活動によって自身の進路に必要な能力を獲得しようとしている様子が垣間見える。26早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/23―30
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