2.調査対象・調査方法生にとって,日本の就職活動のシステムを理解し,そのシステムの中で日本語を駆使しながら適性に合った就職先を見つけるということは極めて困難であり,そのような留学生に対して十全な理解と行動を短期間で促すこともまた容易ではないと考えられるからである。適切な支援を行うためには,まず,留学生の意識の実態や,その環境を知る必要がある。留学生が日本語学習と自分のキャリアをどのように結びつけ,何を目指して,どのような就職活動を行っているのか,どのような支援を利用し,必要としているのかという実態を把握することが重要であろう。 そこで,本調査では,学習者のキャリア意識と就職活動の実態を知るため,進路,特に自身のキャリアに対する意識や就職活動の準備状況,支援の要望などを明らかにするアンケート調査を実施し,その結果を報告する。 調査対象は,早稲田大学日本語教育研究センターが提供するキャリア形成に関わる日本語科目(「ビジネス日本語」関連科目など)の初級,中級,上級クラス履修者,合計 155名である。アンケート調査の質問項目は,パイロット調査で用いた質問項目を基に,現在の日本語学習をどのように将来の仕事に活かそうとしているのか,また,日本語学習に加え,どのような就職準備をしているのかを明らかにする目的から,筆者らが「日本語学習」「将来の進路」「就職活動」の 3 点に関わる 16 項目を選定した。 本稿では,まず,3.1 と 3.2 において,これらの質問項目のうち,留学生のキャリア意識や具体的な活動の概要を知ることのできる以下の(1)から(8)の 8 項目の調査結果を取り上げる。なお,このうち,質問(1)は 5 つの選択肢(①〜⑤)から選択する複数回答可能な質問であるが,質問(2)から質問(8)は,「はい」「いいえ」で回答できる第 1の質問と,その回答の別によって,具体的な内容について記述する第 2 の質問(①②の数字で記載された項目)からなっている。次に,3.3 において,「大学にどのような支援を期待したいか」という質問に対する学習者の回答を整理する。 《質問項目》 (1)日本語学習の目的は何か。 ①日本で仕事がしたい。②できれば日本で仕事がしたい。 ③自国で日本に関係する仕事がしたい。④趣味や教養として続けたい。⑤その他 (2)①本科目履修の目的は就職か。 ②履修目的が就職でない場合,目的は何か。 (3)①クラブやサークルに入ったことがあるか(現在所属している場合を含む)。 ②入ったことがある場合,どのようなクラブやサークルに入ったことがあるか。 (4)①アルバイトやインターンシップの経験はあるか。 ②経験がある場合,どのようなことをしたか。 (5)①将来の進路(就職・進学)のための勉強や活動の計画はあるか。 ②計画がある場合,どのような勉強や活動をする予定か。 (6)①就職に関する情報収集など具体的な就職活動をしているか。24早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/23―30
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