早稲田日本語教育実践研究 第7号
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―日本語学習者のキャリア支援に向けて―要旨1.はじめに寅丸 真澄・中山 由佳・齊藤 眞美ワーク形成支援23早稲田日本語教育実践研究 第 7 号  本研究の目的は,本学留学生のキャリア意識の実態を明らかにし,日本語教育の観点から,そのキャリア支援のあり方を検討することである。本研究では,本学日本語教育研究センターにおいて開講されているキャリア形成に関わる日本語科目履修者を対象に,進路,特に自身のキャリアに対する意識や就職活動の準備状況,支援の要望などを明らかにするため,アンケート調査を実施した。その結果,日本語レベルが高くなるほど,キャリア意識が高まっていること,および就職に向けた具体的な活動を行っていることが明らかになった。一方,中級レベルでは,日本企業または在外日本企業に就職したいという希望はあるものの,日本語能力や情報収集力の不足から,十分な準備がなされていないことが示唆された。今後は,日本語学習者の実態に留意し,関係箇所と連携しつつ,日本語レベルや学習者の目的に応じた対応策を検討すべきであると考える。  キーワード: 留学生,キャリア意識,キャリア支援,関係各所との連携,ネット 本研究の目的は,本学留学生のキャリア意識の実態を明らかにし,日本語教育の観点から,そのキャリア支援のあり方を検討することである。 少子高齢化による学生数の減少と大学のグローバル化を背景にして,国内大学の留学生の受け入れ数は年々増加している。平成 29 年度の高等教育機関留学生数は 188,384 人に達し,前年度比増加率は 28 年度の 12.5% に続き,10.1% という高水準を保持している(日本学生支援機構 2017)。このような状況下で,各大学では,英語プログラムや日本語短期プログラムなど多様なプログラムが新設され,留学生が多様化,増加している。そして,そのような留学生の増加に伴い,日本で働くことを希望している者や,可能であれば日本で働きたいと考えている者も増加傾向にあると考えられる。 一方,優秀な留学生の労働力に期待し,留学生の国内での就職率を現在の 3 割から将来的に 5 割に伸ばすという方向性も確認されている(内閣府「日本再興戦略改訂 2016」)。そのため,大学・大学院を卒業・修了した留学生や,日本語プログラムを修了した留学生が国内企業や在外日系企業に就職できるようなキャリア支援を行うことが喫緊の課題になっている。そして実際,これまで日本人学生を中心に行われてきた大学のキャリア支援の対象は留学生まで広がり,日本人学生との公平性も確保されつつあると言える。 しかし,留学生の特性を踏まえたキャリア支援が各教育機関において十分に行われているのかという点については疑問が残る。日本とは異なる社会文化の中で生まれ育った留学ショート・ノート留学生のキャリア意識調査報告

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