のことから中上級学習者であっても段落間のつながりを表す接続の言葉の運用が不足していることが考えられる。 「内容」においては「1.序論」「2.本論」「3.結論①問いの答え」「4.結論②今後の課題」「5.内容全体における論旨の一貫性」の 5 項目を評価した。受講生は 78% が A+,Aと評価したのに対し,教員から A+以上の評価を受けた受講生は 54% であった。受講生と教員間で最も評価のずれが見られたのは B 評価であり,全体的に 35% の受講生が教員から B 評価を受けたのである。また C 評価においても評価のずれが目立っているのが分かる。事前調査で受講生は,レポートは内容が重要であると答えていたが,内容面における教員側との評価のずれから,レポートにおける良い内容とは何かという認識が受講生と教員間で異なることが窺えた。 「表現の適切さ」においては「1.文体」「2.語彙・表現」「3.文型」「4.文の長さ・ねじれ文」「5.文末表現・接続表現」「6.表記の誤り」の 6 項目について評価した。上記の表 2 から分かるように,受講生と教員間で最も評価のずれが大きいのは A+評価と B 評価である。全ての項目において受講生の 12% が A+評価をしているが,教員から A+評価を受けた受講生は 3% に過ぎなかった。下位項目で特に開きが見られたのは「3.文型」に関する項目である。当項目について,受講生は 13 名のみが B と評価したが,教員からは47 名の受講生が B 評価を受けているのが分かる。このことから,中上級レベルの学生であってもレポートに相応しい文型は明確な指導が必要であることが窺えた。 最後に「形式」においては「1.引用の量」「2.引用と意見の区別」「3.参考文献の書き方」「4.フォーマット」の 4 項目について評価したが,この項目でも全項目において A+評価と B 評価で受講生と教員間の評価のずれが見られた。とりわけ下位項目の「3.参考文献の書き方」においては,12 名の受講生が A+と評価し,B 評価は 4 名しかいなかったが,当下位項目において教員から A+評価を受けたのはわずか 1 名であり,B 評価を受けたのは 28 名であった。これは,事前調査で受講生がレポートの形式を軽視していることと繋がる結果であると思われる。レポートというのは内容だけではなく,その形式面,特に引用や参考文献の書き方は重要であるため,本調査の結果から指導の際には形式面に関する書き方について注意を向ける必要性が浮かび上がったと考える。5-3.レポート修正稿における検証 本項では,前述したルーブリック評価の有効性を検証するため,レポートの初稿と修正稿の比較を行った結果について述べる。その結果を以下の図 2 に示す。図の「A 〜 H」は8 名の受講生を指し,受講生の選抜基準については前述の 4□2 を参照されたい。なお,比較対象とした項目は「構成」「内容」「表現」「形式」の 4 つであり,「準備(アウトライン)」は初稿との点数の差があまり見られなかったため,調査対象から排除した。 結果をみると,受講生のレポートは初稿から全体的に概ね改善されたといえよう。特に事前調査とルーブリック評価表調査で受講生が軽視しているという結果が出た「形式面」では 8 名中 7 名が初稿との差で高い割合を占め,改善が見られた。このことからルーブリックによる評価を行ったことにより,受講生は自身の不足している点に気づき,意識して改善につなげていたと考えられる。20早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/15―22
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