4.調査概要5.結果と考察 総合 5 における到達目標は「A」評価とした。各教員は,「A」評価欄に書かれている内容が十分にできるように指導を行い,「A+」評価欄に書かれている内容はレベル向上のための目標であることを受講生に説明する。そして,教員は評価の際,どの部分ができていないのかを下線を引いて受講生に示し,ルーブリック評価表の最終評価は受講生の評価と教員の評価を擦り合わせて行うこととなっている。このようにルーブリック評価は受講生に不足している部分を明示化し,かつ受講生の気づきを促すことを目的としている。受講生はその部分を修正し修正稿を提出する。 本調査は,2017 年度春学期総合 5 の受講生(70 名)と教員(8 名)に対して,「事前調査(質問紙調査)」と「ルーブリック評価表調査」を実施した。なお,当調査はいずれも調査協力に同意した教員と受講生に限り行った。4-1.事前調査 事前調査は,筆者らが作成し,補助教材(冊子)を用いたレポートに関する基本的な指導が終わり,レポート執筆に入る前に実施した(有効回答数 70 名)。どのようなレポートがいいレポートだと思うかという質問に対し,構成やテーマ等 10 項目の観点から成る選択肢と自由記述で構成されている。選択肢は複数回答可とした。選択肢の項目はルーブリック評価表の評価項目を参考に作られたものである。詳細は,「5□1.事前調査による結果および考察」の図 1 を参照されたい。4-2.ルーブリック評価表調査 ルーブリック評価表調査は,レポート執筆後,受講生のレポートの初稿に対して,受講生と教員のルーブリック評価表を用いて行った(有効回答数 49 名)。そして,ルーブリック評価表の有効性を検証するために,レポートの修正稿を用いてどれだけ改善されたか検証を行った。これは初稿と修正稿の評価を比較し,改善された項目や程度をみることで,ルーブリック評価の効果を探るためである。対象としたレポートは,教員による初稿の評価が 22 点満点中 50% に満たない 11 点以下の学生,下位 8 名の受講生のレポートであり,4 名の担当教員により評価を行った。5-1.事前調査による結果および考察 事前調査の結果を図 1 に示す。左側は事前調査の選択肢項目であり,右側はその結果をまとめた図である。図の横軸の 1 から 10 は事前調査の選択肢項目で,縦軸は人数を示す。選択肢項目は主にレポートの内容面(項目 3・4・5・6・7・8)と形式面(項目 1・2・9・10)について問う項目になっている。その結果,受講生はレポートの形式面をそれほど重視していないことが窺えた。17ショート・ノート三井一巳・鄭在喜・藤田百子・吉田好美/レポート作成におけるルーブリック評価の再考
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