早稲田日本語教育実践研究 第7号
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―教員と受講生の評価観点のずれと レポート産出の変化からの考察―1.はじめにThe Japan Times)で扱われている社会問題について 1500□1800 字程度で書く活動である。2.先行研究三井 一巳・鄭 在喜・藤田 百子・吉田 好美15ショート・ノート早稲田日本語教育実践研究 第 7 号   キーワード:ルーブリック評価,意識化,レポート活動,中上級レベル 本学の日本語教育研究センター(以下,CJL)の日本語科目は,「総合科目群」と「テーマ科目群」に分けられており,そのうち「総合科目群」は「初級から上級前半の学習者(レベル 1□6)を対象に,標準化されたシラバスと教材によって展開され,四技能を総合的に学習する科目」である 1)。この総合科目群の総合日本語 5 レベル(以下,総合 5)は,中上級レベルとしてレポート活動を実施している。 総合 5 におけるレポート活動は,学期中に 1 回,教科書(『新中級から上級への日本語』当レベルではレポート執筆に際し,補助教材(冊子)を用いて文体や文末表現などの基本的な指導を行っている。レポートには初稿と修正稿があり,初稿は教員・受講生ともにルーブリック評価表をもとに評価し,修正稿は初稿を踏まえた改善点を教員が評価する。しかしながら,受講生のレポートの指導の際には,教員と受講生の間で評価の観点にずれが見られ,それが指導上のミスコミュニケーションを誘発することもある。その結果,対応に苦慮する教員が散見されるといった課題も見られる。また,ルーブリック評価表の評価観点によって,学習者は自身のレポート活動のモニターすること,教師は指導を有効に導くことを期待されるが,評価観点のずれの詳細は明らかとなっていない。 そこで,教員と受講生間にどの項目において,どの程度の評価のずれが見られるのかを調べるため,総合 5 の受講生と教員を対象にレポート作成についての「事前調査」と「ルーブリック評価表調査」を実施した。更に,レポートの初稿と修正稿の評価を比較することによりルーブリック評価表の有効性の検証を試みた。本稿ではこれらの調査結果について述べる。 ダネル他(2014)は,ルーブリックを適切なタイミングで有益なフィードバックを学習者に与えるという点で価値ある道具であるとし,また「ルーブリックを使用すると受講生は自らの弱点を発見することができ,自分自身で改善計画を立てることができるようになる」と述べている。更に,藤長・中尾(2013)では,日本語の授業の受講生がルーブリッレポート作成におけるルーブリック評価の再考

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