早稲田日本語教育実践研究 第6号
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93古屋憲章・木下直子・武田誠・稲垣みどり・太田裕子・舘岡洋子・陳永盛・山田英貴/学習者オートノミー育成に向けた学生支援を考える3.わせだ日本語サポートと各箇所の連携事例る 22 号館において,外国人留学生を対象とする,日本での就職活動に関するセミナー及び個別相談の実施が挙げられる。また,キャリアセンターの職員だけでなく,学生キャリア・アドバイザー(SCA) 7)の CJL 日本語科目への参加も考えられる。そのほか,SCA,Student Career Staff(SCS) 8),ライティング・センターのチューター,「サポート」スタッフが SCA 育成研修に参加し,互いに連携を強化することもできるだろう。 1 章で述べた通り,2016 年秋のパネルディスカッションでオートノミーを促すための取り組みとして,a.理念を共有する場,b.各箇所間で連携して支援実践にあたる場,c.「支援される側」と「支援する側」という二項対立を超えて,協働で問題を解決する場を持つことが提案された。そこで 3 章では,パネルディスカッション以降,取り組んできた「サポート」と各箇所の連携事例について紹介する。 まず,a.理念を共有する場として,国際教養学部グローバルネットワークセンター,ライティング・センターとの連携がある。 「サポート」では,毎学期開始前に 2 日間(4 時間半程度)のスタッフ研修を行っている。研修には,新規スタッフや継続スタッフに「サポート」の理念(自律学習の実現をサポートするため,ティーチングやチュータリングではなく,日本語学習アドバイジングの実践を目指す),「サポート」スタッフの役割(アドバイザー,ナビゲーター,学習リソースの提供者),支援の際の留意事項,支援活動の流れなどを理解するとともに,業務分担をしておくというねらいがある。2017 年度春学期開始前に行われたスタッフ研修には,2-1 で紹介したように,国際教養学部グローバルネットワークセンターでアドバイジングを担当する助手 2 名が参加し,「サポート」の理念や「サポート」スタッフの役割に関する理解を共有した。また,二つの相談事例(①日本人らしく日本語を話せるようになるにはどうしたらいいか。②聴解の勉強方法と計画についてアドバイスがほしい。)に関し,どのように対応するかを「サポート」スタッフと助手で検討した。検討においては,お互いの支援実践の経験を参照しつつ,活発な意見交換が行われた。 2017 年度春学期現在,延べ 802 名の国際教養学部に所属する日本語科目履修者がいる。今後,これらの日本語学習者が相談に訪れた際,希望に応じて,助手が相談者とともに「サポート」に来て対応にあたるというフローの選択肢があることを確認している。 ライティング・センターについては,2-2 にあるように,大学院生がチューターとなり,日本語や英語で書かれた学術的文章を指導しているが,チューター自身の成長のために,チューター研修が定期的に行われている。2016 年度秋学期には,そのチューター研修に「サポート」担当教員 2 名,スタッフ 1 名が参加し,他の参加者とともにオートノミーを促すための理念,対応を学んだ。 また,「サポート」では毎学期,スタッフが自主的に読書会を開き,日本語学習アドバイジングに関連する本を読んで議論している。2017 年度春学期にはこの読書会に国際教養学部グローバルネットワークセンター助手が参加し,「サポート」スタッフらとともに,対象図書の内容をアドバイジングにおける対応と結びつけて検討した。読書会には,今

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