早稲田日本語教育実践研究 第6号
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91古屋憲章・木下直子・武田誠・稲垣みどり・太田裕子・舘岡洋子・陳永盛・山田英貴/学習者オートノミー育成に向けた学生支援を考える2-3.留学センター(1)学生支援の現状 留学センターは,全学協定に基づく交換留学生を受け入れる際の窓口として,来日直後のオリエンテーションはじめ様々な支援を行っている。オリエンテーションにおいては,銀行口座開設,住民登録届,国民健康保険など日本での生活に不可欠な手続きを詳細に説明するとともに,本学の異文化交流センター(ICC)を紹介するなど,外国人留学生と日本人学生との交流を促進するべく,学生への周知に注力している。留学生の地域ごと国ごとの文化的,社会的背景の違いも大きいことから,地震が起きたときの対応という天災の話から,自転車の防犯登録といった実生活の細かい話まで日本での生活に順応するうえでのきめ細かいケアを行っている。 外国人留学生と日本人学生の交流という観点においては,交換留学生対象の学生寮に を行っており,RA を務める日本人学生にとっても多様な生活環境下における貴重な成長機会となっている。学生の変調は生活面から把握できることも多く,寮での様子から管理人,RA と連動し,早期発見と適切な学生指導により大事に至らず解決につながった事例も多い。 こうした学生同士の主体的な交流というのは,本学の強みの一つであり,留学センターにおいても学生留学アドバイザーというボランティア団体が組織されている。留学センターのプログラムをとおして海外留学を経験した学生によって 2005 年に設立されたもので,自らの留学経験を後輩に伝え,アドバイザーのサポートを受けて留学した学生が帰国後に留学アドバイザーになるという学生間の好循環が生まれている。また,本学で受け入れる外国人留学生に対する日本語の勉強等への助言については,チューター制度が設けられており,現状では外国人留学生が 7 割,日本人学生が 3 割という割合でチューターを担っている。支援内容としては,学部・大学院に新入した留学生を対象とし,初年度 1 年間チューターからの指導が受けられる制度となっており,慣れない環境下での学習支援として機能している。(2)今後の連携案 前述のとおり,本学の強みの一つである学生の自発的な交流を促進するため,例えば,留学センターの留学アドバイザーとライティング・センターのチューターなど,支援する側の学生同士の連携を強め,各箇所での縦関係に横断的な関係が交わることによって,より有機的な交流が生まれる可能性を感じている。2-4.キャリアセンター(1)学生支援の現状 キャリアセンターは,①教育・研究活動第一主義,②低学年生に対しては学内のガイド役,③就職活動を行う学生に対しては企業・採用等情報の提供役 , ④社会への発信という四つの基本的な考え方に基づいて,具体的には次のような学生支援をしている。 ①に基づき,学生が授業や課外活動を充分に満喫できる期間と環境を維持しつつも,将来,学生が社会,所属する組織の中で存在感のある人物として活躍できる場を自力で選ぶResident Assistant (RA)を配置し,異国で生活する交換留学生に対して日常的なサポート

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