早稲田日本語教育実践研究 第6号
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88早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/87―96ムです。「わせだ日本語サポート」では,(中略)自分自身の日本語学習の目的,目標,方法,計画等について,スタッフといっしょに考えることによって,学習者それぞれが自分の学習に関して,さまざまな気づきを得て,自身の学習を主体的に進めていくことができるようになります。(pp.4-5) 「サポート」では,これまで留学生からの日本語学習に関する様々な相談事例を積み重ねてきた。相談事例の積み重ねや定例ミーティングにおける事例検討をとおして,「サポート」スタッフらは,留学生が抱える問題が単に日本語学習の問題に留まらず,様々な問題が複合的に絡み合っているのではないかと考えるようになった。また,問題が複合的であるがゆえに,担当箇所が特定されず,結果的に問題を抱えた学生が各箇所をたらい回しにされるというような事例にも直面するようになった。例えば,次のような事例である。ング・センターに誘導したところ,当該の学生がライティング・センターで「日本語の形式に関しては,「サポート」で」と言われ,「サポート」に戻ってきた。学生をキャリアセンターに誘導したところ,当該の学生がキャリアセンターで「日本語の形式に関しては,「サポート」で」と言われ,「サポート」に戻ってきた。 以上のような「サポート」スタッフらの問題意識に基づき,「サポート」スタッフの一人である古屋が,留学生関係箇所の担当者によるパネルディスカッション「多文化共生キャンパスにおける学生支援を考える―箇所間連携の可能性とオートノミー・問題発見解決能力の育成―」を企画した。同パネルは,2016 年 9 月 18 日に行われた早稲田大学日本語教育学会 2016 年秋季大会において,CJL,国際教養学部グローバルネットワークセンター,ライティング・センター,キャリアセンター,留学センターの各担当者 4)をパネリストとして行われた。パネルの目的は,次の 3 点であった。①各箇所で掲げられている留学生を対象とする支援の理念を共有する。②各箇所で行われている留学生を対象とする支援の取り組み,及び実践事例を共有する。③各箇所間での連携の具体像を共有する。(木下ほか,2016,pp.2-3) パネルでは,まず,各担当者が各箇所で行っている留学生支援の理念,取り組み,及び具体的な実践事例を紹介した。次に,各箇所から提示された実践事例をもとに,留学生支援のあり方,及び箇所間の連携に関し,議論を行った。 議論の結果,まず,オートノミーの育成を留学生を対象とする支援の理念とすることがあらためて確認された。そのうえで,オートノミーを促すための取り組みとして,次の三つの場を設けることが提案された。a.(オートノミーの育成という)理念を共有する場(例えば,スタッフの合同研修)。b.各箇所間で連携して支援実践にあたる場。c.(「留学生は支援されるべき人」と一方的にとらえるのではなく)「支援される側」と「支援する側」という二項対立を超えて,協働で問題を解決する場。これらのうち,特に b,c に関し,舘岡(CJL)より次のような具体的な提案があった。b.一つの相談事例に対し,複数の箇所の担当者が関わる合同アドバイジングを行う。c.合同アドバイジングを段階的に教職員によるサポートから留学生,日本人学生にかか・ 日本語の授業で課されたレポートに関し,「サポート」に相談に訪れた学生をライティ・ 就職活動に必要となるエントリー・シートの文章に関し,「サポート」に相談に訪れた

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