早稲田日本語教育実践研究 第6号
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注早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/77―86 865.まとめと今後の課題 本研究の目的は,木下ほか(2017)の課題をふまえて本コースで実践的アプローチを取り入れた結果,履修者の日本語学習アドバイジングのプロセスに改善が見られたかを確認,検討することである。具体的には,本コース履修者 3 名,わせサポの現職アドバイザー 2 名を対象にインタビューを行い,ある相談事例を用いて,図 1 にあるようなアドバイジングのプロセスを描くための質問力が描けているか(①),①で明らかになった相談者の問題に対応するような学習リソースが提案できているか(②)を検討した。 その結果,問題の所在を明確化するプロセスが履修者全員に確認され,質問力に対する木下ほか(2017)で見られた課題がある程度克服されたことが明らかになった。 その一方で,日本語学習に関する学習リソースの知識や情報が不十分であるために,問題解決につながるかが判断できない,具体的な学習リソースが提案できないなど,黒田(2016)の「(2)幅広い学習リソースに関する情報への精通」が新たな課題として浮き彫りになった。この点については今後の課題とし,コース改善に臨んでいきたい。  1) わせサポは 2017 年春学期現在,火・水・金曜日の 12:00 から 17:30 に開室し,各曜日 2名のスタッフが常駐している。日本語に加え,英語・中国語・インドネシア語など留学生の母語での対応が可能である。1 回のセッションは原則 45 分までとなっている。  2) わせサポにおける活動については,『わせだ日本語サポート NEWS』を参照されたい(https://www.waseda.jp/inst/cjl/assets/uploads/2017/04/832de8249638d15d36f00aa0d9fdf8f6.pdf)。また,古屋・千・孫(2017)がわせサポでの実践に詳しい。  3) こうした専門性を持つ日本語学習アドバイザーの育成のため,わせサポでは,2 日間の事前研修や毎週の定例ミーティング,任意参加の読書会などを行っている。参考文献青木直子・中田賀之(2011)『学習者オートノミー 日本語教育と外国語教育の未来のために』ひつじ書房奥田純子(2012)「日本語学習アドバイジング−その深さと大切さ−」早稲田大学日本語教育学会春季大会資料 http://gsjal.jp/wnkg/dat/2012spring/120324_kouen_PPT.pdf木下直子・トンプソン美恵子・毛利貴美・尹智鉉(2017)「日本語学習アドバイザー育成をめざしたコースの可能性と課題−履修者と現職アドバイザーの比較を通して−」『日本語教育方法研究会誌』23(2),30-31.黒田史彦(2016)「日本語学習アドバイジングの挑戦」アカデミック・コーチング学会第 1 回年次大会資料集『コーチング−教育現場での実践−』19-24.舘岡洋子(2016)「ことばの学びの中継点として−多様性,主体性,開放性をもった CJL へ−」『早稲田日本語教育実践研究』4,3-6.古屋憲章・千花子・孫雪嬌(2017)「自律学習支援から考える日本語教育の公共性」川上郁雄(編)『公共日本語教育学−社会をつくる日本語教育−』くろしお出版,171-177.三代純平(2009)「コミュニティーへの参加の実感という日本語の学び−韓国人留学生のライフストーリー調査から−」『早稲田日本語教育学』6,1-14.(きのした なおこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(とんぷそん みえこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(もうり たかみ,早稲田大学日本語教育研究センター)(ゆん じひょん,早稲田大学日本語教育研究センター)

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