早稲田日本語教育実践研究 第6号
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84早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/77―86   S3 は,相談者が述べている授業内容のわからなさを確認しているが,その結果とは異な A1 は相談事項 a を取り上げ,その「わからなさ」についてどの授業か,特定の授業か,性が日本語能力が,日本語能力試験 2 級程度かどうか把握していない可能性があるということを伝えます。というのは,早稲田には日本語がパーフェクトにしゃべれる留学生はいくらでもいるので,特に何の断りもなくそこに座っていると,この人は日本語しゃべれるんだなっていう前提で,先生も周りの生徒も話したりディスカッションしたりすると思うので,もしこういう現状があるなら,そういうことを,周りの日本人には伝えているようですが,先生に伝えてあるのか。もし先生がそういうことを配慮してくれるんだったら,それは助けになるよという感じで,そういう感じで進めていくかなと思います。そんな感じで始めていって,前半のいろいろな質問に対して何かしらアプローチができるかなという感じです。」る提案,すなわち,先生に自分の日本語力が日本語能力試験 2 級程度であることを伝えるよう促している。「わからなさ」が特定できた場合には,それに対して「何かしらアプローチができるかな」と述べているが,具体的な学習リソースの提案にまでは至らなかった。4-4.現職アドバイザー A1 へのインタビュー①問題の所在を探るための問い 「具体的にどの授業かって言うのがわからない,全部なのかある特定の授業なのかっていうのがわからないので,その辺もどういう授業取っていてどんな感じなのかっていうのを聞いてみて。本題は,もしこれは分かるけどこれは分からないみたいなのがあれば,そのわからない授業に関してわからなさっていうのをもうちょっと聞く感じ。−中略−録音したりとかしてあとで聞きなおすっていうことで,でもそうするとそのわからなさっていうのが聞き取れてないっていうことなのか,その内容自体がわからないっていうか知識がないがゆえにわからないっていう場合もあるので。その辺の聞き取りではなくて知識みたいな部分になるのであれば,背景的な知識っていうのを学ぶにはどうしたらいいかなっていうところかな」復習をしているかなどを確認した上で,録音して復習しているのに聞き取れていないのか,授業の背景的な知識がないためにわからないのか,わからない原因を特定していくという対応であった。この「わからなさ」を特定するという方向性は S3 と類似している。 また,A1 は相談事項 c にふれなかった理由について自らの苦手意識を挙げ,根本的な問題は相談事項 c である可能性についても言及している。②問題解決のための提案 「聞き取りではなくて知識みたいな部分になるのであれば,背景的な知識っていうのを学ぶにはどうしたらいいかなっていうところかな,それでリソース紹介するなり一緒に考えるなり。あとはそういう本とかそういうものもあるけど,クラスのサイズもあると思うんで,本当に大講義だったら難しいんだと思うんだけど,ある程度小さいのだったら周りの人に聞いてみたらどうかとか,人為的な,あんた先輩いないのとかそういうことも聞いたりして…」

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