S3 は,相談事項 a,b について「わからなさ」を相談者自身がどう分析しているのかを問83木下直子・トンプソン美恵子・毛利貴美・尹智鉉/日本語学習アドバイザーの育成に向けた実践的アプローチの効果の検討 あった。それは,授業で提示していた「具体的な学習リソースに結びつける」というプロセスとは異なっていたことも一因だと思われる。4-2.履修者 S2 へのインタビュー①問題の所在を探るための問い 「6 月とかだったらテストが近いから,もう,本当に全部聞き取って単位とか落としてもいいから聞き取っていいみたいな感じなのか。でもとりあえず単位だけは取っておきたいみたいな。ゆくゆく慣れてってみたいなのを目指してるのかは,もしもアドバイザーだったら聞くかもしれない。」のか聴解力の向上かを選択してもらうことでアドバイジングの対応内容を絞っている。②問題解決のための提案 「もしも単位はちょっと取得したいとかだったら,言ってることを聞くんじゃなくて自分の自主学習とかそれに必要なリソースとかの提供とかを考えるかもしれなくて。聞くことにまず専念したいみたいな感じだったら自分の環境を広げる提案をするかもしれない。例えば ICC じゃないですけどそういう所に入ってみたりとか。−中略−なるたけ日本語の講演会に参加してもらったりとか。自分の興味のある内容について聞く所に行ってみたりとかかなあって思います。」 その上で単位を取得したい場合は,自主学習や必要なリソースを,聴解力の向上をねらう場合は,ICC や日本語の講演会,興味ある内容が聞けるところを紹介するというように,漠然とした提案にとどまっている。4-3.履修者 S3 へのインタビュー①問題の所在を探るための問い 「この人の場合は,授業を理解したいというのと,テストでちゃんとした点数を取りたいという目標,目的は明確なので,まず自分は,どういうふうに分析しているかというのを聞きたいと思います。先生の言っていることは半分もわかんないということで,先生の言ってることが分からない理由はどういうことか。例えば,それは語彙が難し過ぎて分からないんですかということか,先生が話しているスピードが早過ぎて分からないんですかとかあると思うんですけど,まずそういう感じのことを聞きます。」うという。S1,S2 が相談事項 a,b のどちらを優先するのか見極めようと対応していたのに対し,S3 は,学習目標は明確であるとし,「わからなさ」の把握に努めている点で異なる。②問題解決のための提案 「いろいろな返答があると思うんですけど,それからアドバイスとして,先生が,この女 S2 も S1 と同様に,相談事項 a,b について取り上げ,相談者が優先したいのは単位な
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