824-1.履修者 S1 へのインタビュー①問題の所在を探るための問い 「まずはこの人が最終的に,今一番困ってることが,言ってることがわかんないっていうのはリスニングなのかテストの点を取るのか,暗記とか。まずどっちなのかなっていうのをもう少し具体的に,それこそ問題意識の明確化をまずします。」テストがあったが,結果はひどかった」のどちらであるのかを選択してもらうことにより,問題の所在,背景を探ろうとしている。②問題解決のための提案 「もし,先生の言ってることが半分もわからない,リスニングのほうにこの人の原因があるんだったら,例えばラジオとかであったり生の日本語が聞けるようなリソースの提供であったり,あとは日本人と話すことに慣れていない可能性があるので,−中略−もっと日本人と話したほうがいいとか,そのためのどうしたら日本人と一緒に話せるか授業じゃなくてって考えたときに,こういうコミュニティーがあるよ,であったりっていうのが言えるのかなって思いました。 もし,この人が,点数が取りたいっていうことが根本にあるんだとしたら,この人は違う文法の本を紹介してほしいって言っていますけれども−中略−今使ってる本があるんだったらそれを復習したほうがいいので,−中略−私だったらこれをもう少し 100 パーセント,120 パーセント使いこなせているのかっていうのを聞くかなって思います。」ミュニティーを紹介し,テストの点数の問題なら,これまで使用してきた日本語能力試験対策 2 級の本の復習を提案するという。日本語能力試験 2 級の文法を復習することが,大学の講義理解に最適な方法であるかを判断するためには,問題の所在が少なくとも文法にあることを確認する必要があるが,それができていない。そのため,相談者が抱えている問題と紹介する学習リソースのつながりが見えにくい対応となっている。S1 は,相談事項 c についても言及しており,以下の通り「日本に溶け込むようなアプローチ」がよいと判断している。 「みんな『難しい』と言っていたんだけど高い点数を取って,この辺,日本人ってこれあるあるじゃないですか。勉強しないとか言って 100 点取るみたいなあるある。−中略−精神的にまだ来たばっかりでまだ慣れていない環境の中であっぷあっぷしてるような感じを受けるのでこういうふうに言ってるみたいなところから。なのでまずはテストっていうよりは,もしかしたらもう少し日本に慣れるような,日本に溶け込むようなアプローチとかのほうがいいのかなって思ったりもしました。」 コミュニティーへの「境界意識」は,他者に受け入れられているという実感により乗り越えられるという三代(2009)の見方があるが,相談事項 c に対応したのは S1 だけで早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/77―86 S1 は優先すべき目標が相談事項 a「先生の言っていることが半分もわからない」,b「小 S1 は,リスニングの問題なら,ラジオや生の日本語が聞ける学習リソースや日本人とのコ
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