早稲田日本語教育実践研究 第6号
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80早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/77―86図 1 アドバイジングのプロセスNEWS』(注 2 参照)にある「わせだ日本語サポー3.調査概要できるよう,事例を増やして丁寧に確認するプロセ スを 組 み 込 ん だ。 例 えば,表 1 第 2 回「日本語学習者の現状」では,『わせだ日本語サポートトにおける対応の詳細事例」を紹介し,図 1 のように「ラポール形成」を行いながら,1)問題意識を探り,2)問題意識の明確化を経て,3)短期・長期の目標を設定後,4)目標に応じたリソースの紹介を行い,最終的に学習計画の作成へと導くまでのプロセスを提示した。また,同様に,アドバイジングのプロセスを意識化させるための取り組みとして,表 2 第 5 回本コース後半のアドバイジング実践(2)では,観察者がセッションの内容を記録する「振り返りシート」に時系列でアドバイジングのプロセスを書き込めるようスペースを設けた。さらに,表 2 第 6 回アドバイジング実践(2)の次の回,「アドバイジング振り返り」では,留学生からのフィードバックのコピーを配付してクラス全体で共有し,留学生の視点によるアドバイジングセッションのプロセスや自らの「問い」をメタ的に振り返ることができる機会とした。 以上のように 2016 年春学期の課題を踏まえ,2016 年秋学期のコース運営では,日本語学習アドバイザーに必要な専門性の一つ「質問力」の育成を目指して授業運営の改善を行い,新たな実践的なアプローチを試みた。 本稿では,2016 年度秋学期終了後に実施したインタビュー調査の結果を質問力の観点から分析し,前章で述べたコース改善のための実践的アプローチがどのような効果をもたらしたのかについて検討する。 インタビューは,本コースを履修した学部生 3 名(S1,S2,S3)とわせサポの現職アドバイザー 2 名(A1,A2)を対象に行った。履修者のなかでもとりわけ学部生の対応内容に注目して分析を行ったのは,本コースを開設した趣旨の一つがアドバイザー育成を学部に広げるという点であったからである。また,現職アドバイザーのなかから,日本語教育の専門家で 5 年のアドバイザー経験をもつ 1 名(A1)と日本語教育の専門家ではないがアドバイザーとして 1 年の経験を持つ 1 名(A2)を対象にインタビュー調査を行った。この 2 名に対して同様のインタビュー調査を実施することで,日本語教育の専門知識とアドバイジングの経験知によって相談事例への対応に相違点はあるのか,あるとすればどのようなものなのかについても考察を試みた。 一人当たりのインタビュー時間は 30 分程度で,インタビューの内容は事前に許可を得て録音した。その音声データを文字化した資料を本研究の分析対象とした。インタビューでは履修者と現職スタッフに対して日本語学習に関する相談事例を一つ示し,自分ならアドバイザーとしてどう対応するかについて話してもらった。今回の調査で使用した相談事例は以下の通りである。

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