早稲田日本語教育実践研究 第6号
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早稲田日本語教育実践研究 第 6 号   キーワード:質問力,アドバイジングの Do not 三原則,自律学習,相談事例1-1.早稲田大学における日本語学習支援とわせだ日本語サポート 日本語教育研究センター(以下,CJL)は全学の日本語教育を一元的に担う。2017 年春学期には 2,360 名が CJL で日本語を学習した。CJL で日本語を学ぶ留学生は国籍,留学形態,留学期間,留学目的等が実に多様だが,学内における 2032 年までの達成目標「留学生 1 万人計画」もあり,今後留学生数は増加し,その背景もますます多様化していくことが予想される。 多くの留学生が学ぶ CJL では,学生一人ひとりの‘主体性’が重視され(舘岡 2016),留学生は自分のニーズ・目的に合う授業を選択して独自の時間割を作成し,自律的に日本語学習を進めていく。そこでの CJL の役割は彼らが主体性を持って自律的に学習できる最適な環境を整えることである。その一つとして,CJL は教室内外の日本語学習支援を目的とし,「わせだ日本語サポート(以下,わせサポ)」 1)を開設している。多様な留学生による自律的な学びを支える上で,わせサポは CJL の重要な学習支援施設として位置づけられ,これまで大学院生スタッフが日本語学習アドバイジング 2)を行ってきた。1-2.日本語学習アドバイザー育成のための取り組みと本研究の目的 全学的な留学生の増加に鑑み,日本語学習支援の拡充を視野に入れ,わせサポでは学習支援にあたるスタッフを大学院生に限定せず,学部生にも門戸を開くこととし,日本語教育副専攻科目「日本語学習アドバイジング」(以下,本コース)を 2016 年度に開講した(木下ほか 2017)。 ここで,日本語学習アドバイジングについて概観しておく。日本語学習アドバイジングとは,学習者との対話を最重要視し,学習者が自らの学びについて能動的に考え,決め,行動する「自己主導型学習(self-directed learning)を促す支援活動である(黒田 2016)。自律的な日本語学習では,学習者が学習目標を設定し,学習計画をたて,学習状況を内省しながら,適宜改善して目標達成を目指す一連のプロセスを自らの力で描く必要がある。わせサポでは,日本語の学習目標,学習計画,学習そのものに対し,アドバイジングを行う。そこで重要なのは,アドバイザーが一方的に情報提供や助言をするのではなく,77―自律的な学習者を支える質問力を中心に―1.背景・目的木下 直子・トンプソン 美恵子・毛利 貴美・尹 智鉉【ショート・ノート】日本語学習アドバイザーの育成に向けた実践的アプローチの効果の検討

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