74早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/67―76表 2 問題に関する活動に対する評価1.先生が答えの理由を説明する。2.先生が追加の例文を出す。3.わからないことを先生に質問する。4.作った文に対する先生からの FB5.問題の 1 週間後にした復習問題6.自分で文を作ってみる。7.問題をした後,自分の文を直す。8.問題をするとき,クラスメイトと話し合う。9.予習で文を考えて来る。10.友だちの間違いを見る。4-3-3.問題に関する活動に対する評価 秋学期のアンケートでは,指導方法を考える 上 で の 参 考 の た め,「 こ と ば の 使 い 方 の 問題」に関して行った活動についての評価も設問 に 加 え,5 段 階 で 評価するよう求めた。表2 は 平 均 値 の 高 い 順 に並べたものである。 「先生が答えの理由を説明する」や「先生が追加の例文を出す」「作った文に対する先生からの FB」のように,教師からの教示,指導がより役立つと感じられていた。一方,「問題をするとき,クラスメイトと話し合う」「友だちの間違いを見る」のようにクラスメイトから学ぶことについては,評価が分かれる傾向があった。 クラスメイトと話し合うことについてインタビューで尋ねたところ,「話す相手による」との声が多かった。わかっている人や考えのある人と一緒の場合は役に立つが,皆がわからなくて意見が出ず,考え込むだけになってしまうこともあったとのことであった。学習者同士で考えさせるのには,工夫が必要だということがわかった。 秋学期は,より正確な文が作れるよう問題を加えたことで,指導後の文の正確性が上がったことがわかった。語彙リスト型の学習方法の問題点と語彙学習を行う上で重要な点についての気づきも得られていた。修正の結果,学習した語を適切に使えるようになるという目的においては,よりよい問題になったといえるであろう。 その反面,問題量が増え,難易度が上がったため,時間的な余裕がなくなるとともに学生からの自発的な発言を引き出すのが難しくなり,活発な仮説検証が起こりにくくなったようであった。4□3□3 に紹介したインタビューで,皆が考え込んでしまい,有効な話し合いにならないことがあったと報告されたことからも,複数の学習者が集まる授業という場で扱うメリットが少なくなったといえるであろう。また,「説明を聞いてもわからないことがある」という声が春学期以上に多かったことは,学生のレベルに合わないケースが増えたこと,教師の指導の難易度が上がったことを示唆している。より高い正確性を求めたことで,ニーズに合わない学生もいたと推測され,活気のある授業をするのを困難にした可能性もある。教師にとって,扱いの難しい教材になっていたといえるかもしれない。 このように,秋学期の問題は,個々の語句の使い方の理解のためにはよりよい問題になっていたが,授業で使用する教材としては扱いが難しいものになっていた。本研究の流5.考察活動平均値 標準偏差4.60.70074.56.7054.49.7574.40.81764.38.85094.16.90004.07.97533.811.07013.621.13233.531.210
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