早稲田日本語教育実践研究 第6号
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704.2016 年度秋学期の実践早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/67―76    例 8.ことばの使い方を乱れた。 例えば「温暖」で,指導前の文には 27%にコロケーションの誤りが見られたが指導後は 1%になるなど,指導後の文では誤りの減少が見られた。しかし,上記の例 4,例 5 のような動詞の語形の誤りは,指導後の文にもかなりの割合で残っていた。 アンケートでの評価は,「役に立つ,いい問題だと思う」に対する 5 段階評価の平均点がいずれの問題形式でも 4.5 点程度であるなど,概ね良好であった。また,アンケートで,訳語とのずれやコロケーションなど,語彙の学習上重要な点についての気づきがあったこともわかった。一方,欠点として授業で説明を聞いてもわからない部分が残る点が挙げられ,説明の難しさが問題であることがわかった。4-1.春学期の結果からの修正 秋学期は,春学期の調査で指導後の文に誤りが残っていた項目を,問題に加えた。第 9課の問題を資料として末尾に掲載する。春学期は指導後の文にも動詞の語形の誤りが多かったため,正誤判断問題に語形に関する問題を入れ,さらに,学期後半の第 7 課からは,問題 3 の助詞問題を,動詞を選んで適切な形に変え,助詞とともに入れる問題に変えた。また,コロケーション問題は易しすぎるとの意見があったため,「心が乱れる」のような比喩的コロケーションを作る名詞も選択肢に加えた。上記のような修正の結果,問題の量が増え,春学期は A4 の用紙 1 枚程度であったが,秋学期は 1 枚半から 2 枚ほどになった。 さらに,問題を行う際に,予習を促すとともに自らの誤りに気付かせるため,指導の前に予習として考えてきた文をシートに書かせ,指導後に誤りを直させる活動を行った。4-2.指導時の様子 秋学期においては,問題の量が増え,問題の前後に短文を書かせる活動も行ったことから,時間的余裕がなくなり,問題の答えやその理由を考えさせる時間を十分にとることができなかった。他の教師からも,「時間的余裕がなかった」という声があった。文法的な問題が増え,難易度が上がったためか,「活気のある授業をするのが難しかった」「レベルの合わない学生がいた」等の意見も聞かれた。春学期はクラスで活発な仮説検証が行われる様子が報告されたが,秋学期は学生からの自発的な発言や仮説検証の場面も春学期より少なく,指導するのが難しいと感じた教師もいたようであった。 一方,あくまで印象ではあるが,助詞や動詞の語形など文法に関する問題は,課が進むにつれて正しい答えが出ることが増え,理解が進んだように思われた。4-3.問題の効果と評価4-3-1.指導前後の文による効果の検証 協力者が作った文に多く見られた誤りに,コロケーションの誤りがあった。図1はコ

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