早稲田日本語教育実践研究 第6号
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693.2016 年度春学期の実践三好裕子/語を使えるように学ぶための教材作成の試み  尋ねた。秋学期のアンケートでは,語彙学習として行っていたことや,クラスメイトとの話し合いなど問題に関する活動についての設問も加えた。 春学期は総合 3 の 10 クラス中 154 人,秋学期は 11 クラス中 191 人から許諾を得て調査を行った。協力者の母語背景は多様であるが,総合 3 の学生の約半数が中国語圏の学生であるため,協力者も約半数が中国語話者(春学期 78 人,秋学期 96 人)であった。 春学期の実践については,三好(2016)で既に報告済みであるが,その後の修正点を明らかにし,秋学期との比較を行うため,簡単にまとめ,紹介しておく。3-1. 作成した問題 教科書の各課について,三つの出題形式の問題を作成した。問題 1 は対象語を用いた短文の正誤判断問題で,主に訳語との意味のずれに気づかせる問題にした。問題 2 は対象語と共起する語句を選ぶコロケーション 2)問題,問題 3 は空所に助詞を入れる問題とした。3-2.指導時の様子 指導の際は,教師が一方的に答えを教えるのではなく,答えの理由を考えさせるようにしたところ,どのような時にその語が使えるのか,語の使い方についての仮説検証が行われる様子が観察された。教師からも,学生が楽しそうに取り組んでいたとの報告があった。3-3.問題の効果と評価 指導前の文では,それぞれの語に特徴的な誤りが見られた。特徴的な誤りには,以下のようなものがあった。なお,例の表記は原文のまま,下線は筆者が付したものである。 ・「温暖」:コロケーションの誤り   例 1.牛丼の上に,温暖な卵が好きだ。   例 2.温暖な心は大切なものだ。 ・「隠す」:動詞の自他の誤り   例 3.どろぼうは陰にかくしました(正:隠れました)。 ・「理解する」:語形の誤り   例 4.私は使役の意味をりかいしません(正:理解できません)。   例 5.先生のせつめいをりかいしませんでした(正:理解できませんでした)。 ・「普及する」:語の意味理解の誤り   例 6.このプリントは普及してください。(「配布して」の意味)  その他,助詞の誤りは,どの語についても見られた。   例 7.本は服の下でかくしている。

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