早稲田日本語教育実践研究 第6号
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52早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/47―653.自分たちの経験の中から生まれたことを伝える―教材研究と大学院の立ち上げ―あ講習会でそういう話してたら,「先生,日本語教育の先生って,そんなに手の内をさらけ出していいんですか?」って言われたことがある。つまりそれは,例えば視聴覚教材の使い方,実際に持って行ってこういう場合にこういうふうにするんだ,っていう実例を示したりすると,受講者が「へー」って言ってましたよね。「こういうやり方をしています,もっといい方法があるかもしれない」という話はしますよね。最初の研究っていうのは,実践研究っていうのは,今言ったようなことですね。実際の経験から,最初は視聴覚の使い方みたいなものを中心にしていって,それから聴解教育,聴解指導のほうにずーっと移っていって,それが結局,広い意味で視聴覚教材の使い方みたいなものですからね。それは研究者から見たものじゃなくって,それが大事だろうな,それをやらない限り,目標に到達しないだろうというようなことですよね。だから私の話は非常に狭い世界のことだろうと。自分の周囲のことしか言ってないから。東京外大にいるときに,1983 年に『教科書解題』[『教師用日本語教育ハンドブック別冊 教科書解題』]という本が国際交流基金から出てるんですね。河原崎(幹夫)さんと吉川(武時)さんが「教科書の解題ものを出したい」と基金から依頼されて,河原崎さんと吉川さんと私の 3 人でやったんですが。国際交流基金が海外の先生たちから「どういう教科書があるかわからない」,「注文するにしても海外にいると物がないから」,そういう要求を受けて,(教材を)解説したものが欲しいというのがあって,その依頼があったんですよ 9) 10)。それで,教科書は二人(河原崎,吉川)でやるんだけれども,視聴覚のビデオが何本か出始めた,まあ絵教材もそうだけれども,そこもやっぱりやらざるを得ない,ということでやってくれないか,というふうに話が来たんですね。それで『教科書解題』の中に,視聴覚教材などを含めて入れるということで,そっちを私が分担することになったという。それが,スタートなんですね。まあ主に分担したのは視聴覚教材だったんですけどね。市販されているビデオ教材などが出始めた時代だったものですから,そのビデオ教材も入れましょう,ということで入れたという。そういうことを教科書,まあ教材全体として解説するようなことをやったのがその始まりだったんですね。そのあともまた,1992 年に『日本語教材概説』という本を新たに 3 人で出そうか,ということになって,そのときも同じように私は視聴覚教材を担当したんですね。やっているとどうしたって普通の教科書も含めて教材みたいなものに興味をもって,どういう教材があるかとかね,どういう教材の特徴があるかってことを考えざるを得ないものですから。まあその辺がスタートですね。自分が興味がないわけじゃなかったんだけど,やっぱりそれは仕事で受けたらやらざるを得ないからという。そこから興味を持ち始めたということかな。教材もいろんなものがあって,似ているようなところも共通のところもあるんだけれども。特に今現在っていうのは,非常にたくさんの種類(の教材)も出てますから。だから「日本語教育の授業が上手くいかない」とか「教材がない」とか,特に海外の人はよく言うんですけれども,調べればいいんだけど,確かに海外は手に入らないからしょうがない

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