早稲田日本語教育実践研究 第6号
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8早稲田日本語教育実践研究 第6号/2018/5―104.CJL の教育スタッフCJL は 2016 年秋にやっと 1 人目の専任教員の着任がかない,2018 年度春から 2 人目の俳句や演劇などの創造性豊かなものから,就職や進学などの専門日本語に関する科目など,多様化する留学生の興味関心やニーズに対応した,幅広い分野で科目が展開されている。2017 年度は,テーマ科目群として春学期 244 科目,秋学期 248 科目が開講された。また,2017 年度は,テーマ科目群のカテゴリー分類を試みた。240 を超える多様な科目が開講され,学習者にとってはこの上ない豊かな学習環境ではあるが,一方,違いがわかりにくかったり構造がみえなかったりといった面から,履修選択の際のわかりやすさの点で工夫が必要となっていた。そこで,2017 年度は,設置されているテーマ科目を 20 のキーワードでまとめた(図 1)。また,2018 年度からは,9 つのカテゴリー「口頭表現」「文章表現」「聴解」「読解」「文法」「語彙」「社会と文化」「アカデミック日本語」「ビジネス日本語」に分類して,履修の便宜が図れるようにした。また,日本語レベルの初級への構造変化を受け,全てのレベル,全てのカテゴリーで新設科目の設置を行うのではなく,学習者のニーズをみて不足するレベル,不足するカテゴリーにおいて科目設置を行っている。「総合科目群」と「テーマ科目群」という CJL の 2 本の柱について概略を述べてきたが,こうして両者が異なった特徴を発揮しつつ相乗効果をあげている。総合日本語は週 3 コマあるいは 5 コマの開講で,レベルごとに必要なものが盛り込まれており,日本語学習の基盤を支えている。また,バラエティあふれるテーマ科目は,言語要素,言語技能,言語活動の各側面から日本語学習を深めるとともに,日本語学習を社会から切り離された言語の学習とせず,日本文化や多様な専門性と一体化した展開をしている。初級から上級まで広がりをもって多様なテーマに特化したプログラムがあるのは,CJL の大きな特徴である。この部分にこそ他では学ぶことができない CJL の独自性があるのである。「総合科目群」と「テーマ科目群」という 2 本の柱によって,CJL の豊かな学習環境は構築されているといえる。次に,この豊かな学習環境を支えるスタッフたちにも言及する。専任教員が着任する予定である。長い間,CJL には専任教員が置かれずにきた。独立の「全学機関」としての CJL になることで,CJL が自律的に発展していくためには,長期的なビジョンで教育を支える教育スタッフが必須である。2017 年度秋学期の時点で教員数は,准教授 1 名,准教授(任期付)5 名,講師(任期付)11 名,非常勤講師 68 名,インストラクター(非常勤)131 名となり,日本語教育研究科の教員(兼担)10 名を加えると総勢 200 名を超える。この大所帯の教員たちと学生たちを事務スタッフ 14 名がサポートしている。この陣容こそが CJL の大きな財産であり,豊かなリソースであり,将来の希望でもある。やや大げさに聞こえるかもしれないが,この教育スタッフたちのあり方,切磋琢磨が早稲田の日本語教育を,ひいては日本全体の日本語教育をけん引していくと考える。

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