早稲田日本語教育実践研究 第 6 号 科目名:総合日本語 6 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6 ・7・8 履修者数:20 名 筆者は他機関において,学生が評価項目作成から参加し主体的に学ぶ活動実践のデザインを試みてきた(佐野,2010 等)。評価が教員から一方的に示されるだけの場合,学生はその評価項目の妥当性をよく吟味せず,教員評価項目が「できた/できなかった」ことに終始してしまいがちである。その結果,全員同じような個性のない成果で終わることに懸念を感じていたことが実践の背景にあった。しかし,実践を試みるうちに,次のことが分かってきた。それは,①教員が設定する目標や評価基準だけではなく,学生が主体的に自分で自分の目標や評価項目を考え,自己・他者の評価活動を学習プロセスに組み込むことで学びにつながること,②対話的に評価を行うことは,学習者が自律的,協働的に学ぶことにつながること,の 2 点である。こうした学ぶプロセスそのものに評価を組み込む実践は作文教育実践(原田ら,2017)においても見られる。 本実践は総合日本語 6A クラス筆者担当日に行った。総合日本語 6 では,作文・プレゼンテーション活動においてルーブリックによる評価を行っている。総合日本語 6 では「同レベルを教える教師が学生を評価する際の統一的な指標になる」「学生にとって目指す成績評価の着地点が分かりやすい」という側面から,ルーブリックの導入・活用している。使用するルーブリックは,コーディネーター教員が整備したものである。本実践では,発表活動において,学ぶプロセスそのものに評価活動を組み込むことを目指し,成績評価とは別に,学生が自分の評価項目を考え,他者・自己評価をする活動を試みた。 総合日本語 6 では,担当教員 2 名によるチームティーチングを行っている。本実践は,期末発表プレゼンテーションを対象として筆者担当日に行った試みである。109―学習プロセスに自律的評価活動を組み込む実践事例―1.学ぶプロセスに評価活動を組み込む背景2.「総合日本語 6」におけるプレゼンテーション評価活動3.実践の目的と方法佐野 香織【実践紹介】プレゼンテーション活動における評価項目学習者自己作成の試み
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