早稲田日本語教育実践研究 第 6 号 科目名: 論理的な文章表現〜ボランティアと作文を書こう 4-5 /レポートを書こう 6-8 レベル:初級 1・2 /中級 3・ 4・5 /上級 6・7・8 履修者数:作文 35 名,レポート 25 名前後 「論理的な文章表現」の授業は,中級を対象とする「作文」と,上級を対象とする「レポート」に分かれている。双方とも授業の 5 日前までにあらかじめ書いた原稿を提出させるが,教員はその文章を直すことはしない。文法や表記の間違い,アカデミックな文章にはふさわしくないところなどに,下線や波線,〇で囲むなどの記号を書き込んだり,コメントをつけたりすることだけにとどめておく。そして授業の際にクラスメートや日本語ボランティアとグループになり,その原稿を基にディスカッションしながら,協働でより良い文章を作り上げていくという方法をとっている。 作文の授業は一つの作文につき 2 回,レポートは「はじめに」(背景・問題提起・RQ・レポートの構成)→「本論」→「結論」の 3 回に分け,修正・推敲をおこなう。そして学期中に三つ(A4・4 枚)の作文と,二つ(A4・5 枚)のレポートを仕上げる。学期末には自分の作品一つを選び,作文 5 分,レポート 8 分で PPT などを使ってプレゼンテーションを行う。そして最後にすべての作品を文集としてまとめる。一緒に書く作文やレポートのテーマ,文集のタイトル,表紙のデザインなどは,すべて学生達に案を出してもらって決めている。 なるべく多くの人とコミュニケーションができるように,同じグループになるクラスメートやボランティアは毎回変わる。まずは学習者二人が順番に作文を読み,話し合いながら自分たちの力で修正する。ボランティアはそのやりとりを聞きながら,どのように指導したらよいか考えておき,学生の要望に応じてサポートを行う。文法などの間違いだけでなく,どのように書いたらより内容の深い,面白い文章になるかを学習者と同じ目線でディスカッションし,みんなで学びあえるように配慮する。 その際,ボランティアにはすぐに答えを教えたりせず,教員が書き込んだ記号やコメントについて本人に考えさせたり,「ここはどうしたらいいと思う?」「ここではどんなことを言いたいの?」などといった質問をしたりして,できるだけ学習者の思考を促し,考えを引き出してもらうようお願いしている。一通りの修正が終わったら,学習者は自分の書いたものを音読し,ボランティアに発音,イントネーションをチェックしてもらう。1071.授業の概要2.授業の方法森下 雅子【実践紹介】楽しく作文を書くための学習環境のデザイン
元のページ ../index.html#111