早稲田日本語教育実践研究 第 6 号 科目名:大学・大学院進学に向けての文章表現:志望理由書と研究計画書 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・ 7・8 履修者数:34 名 本科目は,日本の大学院進学時に必要となる志望理由書や研究計画書の文章表現を学ぶと同時に,以下のような研究活動に対応できるアカデミック・スキルの習得を目標としている。①大学・大学院で求められる情報収集力を身に付け,専門領域についての知識を深める。②データや資料を用いて具体的な論拠を示し,論理的に他者に伝える能力を身に付ける。③日本の大学・大学院の研究活動で求められる批判的思考や問題解決能力を身に付ける。活動に必要な思考力を身に付ける。⑤自律的に文章を作成するための自己評価のスキルやストラテジーを身に付ける。 本科目では履修者の 9 割以上が実際に大学院への進学を希望している。そのため,この授業の最終目標は一つの完璧な研究計画書を完成させることではなく,大学院入学後に研究テーマが変わっても,新たな研究計画書を自分自身で書き上げられる能力を身に付けることである。よって,「文章表現能力」だけでなく,上記①〜⑤にあるような「自律学習能力」「研究力」の能力育成も意識したプロセスをシラバスデザインに組み込んでいる。授業ではマルチメディア教室において学習者自らが必要な情報を探し,取捨選択しながら自分自身の研究計画書を書き上げていく実践的な活動が中心となっている。2-1.授業の構成と進め方 まず,「研究計画書」の書き方に関する授業(全 12 回)では,第 1 〜 7 回までを「基本編」とし,研究計画書を書くための基礎的能力の育成を目ざす。各授業の前半約 45 分は研究計画書でよく使用される書き言葉の表現を学び,様々なタスクを通して文章表現能力を習得していく。後半約 45 分では,自分の研究に必要な情報を収集して整理していく活動や,研究計画書のサンプルを利用して特徴的な文章表現や構造に気付かせる活動を行う。例えば,「研究の背景・動機」「研究の目的」「研究の意義」「研究の方法」のそれぞれの部分が文章全体に占める割合や,接続詞や表現の特徴,参考文献の数と記述される箇所等をグループでまとめ,発表を行う。また,自分の研究に関わる参考文献のリストを作成し,内容について要約する課題を課すなど,多くの研究計画書や論文を読む活動を通して学術的な文章の表現技術や構成について知り,自分の研究計画書にどう取り入れるか意識1051.授業のねらい④ 研究計画書や志望理由書を書く過程で,自分自身の研究の目的や課題と向き合い,研究2.授業の概要毛利 貴美【実践紹介】研究計画書を書く能力の育成
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