早稲田日本語教育実践研究 第 6 号 科目名:書いてつながる日本語 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7 ・8 履修者数:20 〜 30 名 「書いてつながる日本語 6□7」はパソコンメールや手書きの手紙などの書き言葉コミュニケーションの練習を行うクラスである。コミュニケーションの目的はよい人間関係を作ることだと思われる。書き言葉コミュニケーションでは文法や語彙の正確さや適切な敬語表現はもちろんだが,読みやすいデザインなども必要ではないだろうか。例えば,改行も段落分けもないメールは日本語として正しくても読む気がしなくなる。人間関係が壊れてしまうかもしれない。読みやすさなど気にしないという人もいるだろうが,このクラスではこのような点も重視している。 このクラスは金曜日の 1 限目にコンピュータールームで行われる。メールの書き方の場合,授業では悪い例を出すことが多い。悪い例といっても日本語としては正確である。敬語が適切ではない場合もあるが,多くは必要な情報が抜けていたり不要と思われる情報が含まれていたりするものである。教材(『日本語を書くトレーニング』の一部を修正使用)のメールのどこが悪いかを学生自身が考え,皆で話し合い,メールの登場人物になってメールを書き直し,授業時間内に提出する。次週には返却,教師の講評,再提出と続く。その後,次の課題メールの説明に入る。毎回これを繰り返す。評価のポイントは,読みやすさ・文章の構成・正確さである。 書き言葉のクラスではあるが,教室という場では話し言葉コミュニケーションも必要である。教師が一方的に説明し,学生はそれを聞き一人でパソコンに向かって別の人物になってメールを書き提出して帰るだけでは教師として物足りない。教師と学生また学生同士が現実の会話を行い親しくなる時間の余裕はない。そこで,コンピュータールームの特性を生かし,課題提出後にコースナビのディスカッション機能を使って近況などについてメッセージやコメントを書き込んでもらうことにした。自分が書き込んだことを声に出して読んでもらうこともある。書き言葉コミュニケーションのクラスではあるが,学生同士の双方向の話し言葉コミュニケーションに近づいていると思われる。1031.はじめに2.クラスの進め方3.教師の工夫河内 千春【実践紹介】書き言葉コミュニケーションを楽しむ
元のページ ../index.html#107