早稲田日本語教育実践研究 第6号
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早稲田日本語教育実践研究 第 6 号   科目名:論理的な文章を書くための作文入門  レベル:初級 1・2 /中級 3・4 ・5 /上級 6・7・8  履修者数:31 〜 35 名 本科目は日本語中級レベルの学生のための作文の授業である。大学生にとってレポートなどの論理的な文章を書くことは習得しなければならない技能だが,作文の授業の受講者全員が日本語でレポートを書く必要があるわけではない。日本語で将来論文やレポートを書く必要がある人はクラスのおよそ 5 分の 1 の日本語専攻の学生であった(2017 年度春学期)。一方で,将来日本語で書く可能性はないが,日本語で書けるようにしたい,意見を作文に表したいという希望を持つ学生もいる。将来仕事をする上で日本語を書くことが必要になると考えている人も多い。日本語でレポートを書かない学生であっても,論理的に考えて言いたいことを文章にまとめることは中級レベルでも必要なことだと考える。 本科目では,あるテーマや問題点について,学生自身が自分の意見や考えを論理的な構成で書きことばを使って文章に表現できることを目指している。また,学生同士が作文の内容を理解し合い,情報交換をして考えを深めることをもう一つのねらいとしている。 授業ではレポートは書かないが,レポートなどで使われる書きことばに慣れることは重要なので,自己紹介文以外は普通体で文章を書く。中級学習者は会話によく使われる「じゃない」「けど」などを使いがちなため,書きことばの定着までには時間がかかる。縦書き・横書きの句読点や拗音表記などの位置を確認し,また漢字を習得するため,提出は原稿用紙に手書きを勧めている。 授業は中級教科書『留学生の日本語②作文編』を主に使用して進めている。作文の提出は 12 回(課題作文は各回 400 字)で,最後は各自が自由なテーマで意見文(600 〜 800 字)を書く。句読点の打ち方,段落の役割,中心文と支持文の関係などを学んだ後の,課題作文一回についての授業の流れは基本的には次のとおりである。①作文でポイントとなる文法事項を復習し,短文を書いて練習する。②課題を理解し,内容を考える。課題によっては話し合うこともある。③翌週の授業で,宿題で書いてきた作文をお互いに読み合い,内容等を確認する。④学生が書いた作文は教師が添削して翌週返却する。⑤文法や語法などで共通の問題点があればクラス全体で振り返る。⑥学生は作文を見直し,翌週再提出する。 チェックポイントを事前に確認してから書く意見文は,グループで読んで内容を確認し合い,さらに,ペアで読んで相手の作文を引用してコメントを書く活動を行っている。971.本科目のねらい2.授業の概要小池 恵己子【実践紹介】論理的に考え,書きことばで書く中級作文の授業

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