4224224早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/93―112所 属名前の構成 クラスでの呼び方3, 2-41, 3-23, 2-4Y 学部の 1 年生 3, 4-2Y 学部の 1 年生1, 21, 2Y 学部の 3 年生Z 学部の 1 年生 3, 4-4 朴(2008a, b)は,日本名,韓国名の日本語読み,韓国名の韓国語読み(カタカナ表記),それぞれのアルファベット表記の間を渡り歩きながらアイデンティティの揺れを経験していく自身の人生を語っている。「自分のアイデンティティが国籍や文化的所属や名前といったもののアンビバレントな不一致性の中にこそ存在している」(p.12),「個としての自分」(p.21)といった思想に至っている。 本インタビューにおいて,インタビュアー(筆者)は「アイデンティティ」ということばを使って質問をすることはなかった。しかし,インタビュイー(学生)のほうが「アイデンティティ」ということばを出してきた。幼い頃から「自分は何者か」と悩み,やがてそれが「アイデンティティ」を追求する行為であると自らを俯瞰するようになった過程が,語りを通して垣間見えた。名前についても,上記の文献に見られるような□藤が少なからずあったことが窺えた。 筆者が担当した漢字 3 クラスの中で日本名を持つ学生 6 名と,同時期に筆者が担当した総合日本語 6 クラスの学生 1 名に調査協力依頼をし,インタビューを行なった。総合日本語 6 の学生 1 名は,日本にルーツを持ち,日本語が非常に流暢だが漢字が苦手で,他の 6名と共通の特徴が見出せたため,調査協力者に加えた。 学生 A,B,C,D は日本名と日本以外の国の名前を持っている。E,F は日本名のみである。G は日本以外の国の名前のみである。いずれの学生も日本と日本以外の国の両方にルーツを持つ。名簿では日本名のみの学生も日本以外の国の名前のみの学生も,クラスで呼ばれる名前は他の名前(ニックネーム)を選ぶことができる。それを前提として,名前とアイデンティティという観点から話を聞いた。 2016 年 1 月末,最後の授業の後,22 号館の「面談室」において 1 名ずつインタビューを行なった。インタビューは全て録音した。 録音したデータを,インタビュアー(筆者)の発話も含めて文字化した。インタビュアー(筆者)を I と表記する。 調査協力者の概要は表のとおりである。性別A 女 父はオーストラリア人,母は日本人 X プログラムB 女 父母ともに日系ブラジル人二世X プログラムC 女 父母ともにフランス人(C は養子) X プログラムD 女 父はフィリピン系アメリカ人,母は日系アメリカ人E 男 父は日本人,母はフィリピン人F 男 父母ともに日本人G 男 父はカナダ人,母は日本人 名前の構成(大学の名簿に基づく) 1 =日本姓,2 =日本名,3 =日本以外の国の姓,4 =日本以外の国の名前94表 1 調査協力者父母のルーツ3.インタビュー概要
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