早稲田日本語教育実践研究 第5号
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  K : ポーン先生は,生徒を静かにさせるんですよ。なんか怒ってくれるんですよ。怒ってくれるっていうと変なんですけど。  M: 言いますね。  K : そうそう,怒ります。それで,なんか,昔,私がやってる時も,マリ先生に,私,「かおり先生(筆者)もっと怒ってください」って私言われました。その時に私は,私が日本語で怒っても,あの子たちは,日本語がわかる子はいいかもしれないけど,日本語がわからない子には,何だろう,雑音にしか聞こえないじゃないですか,音がちゃんと,静かにしなさいとか,そういう風に,そういう認識されない。言葉がわからないから,だから,なんか,私が怒っても聞かないじゃないですか。  M: わからないから?  K : そうそうそうそう。だから,なんか,私にしたら,例えばマリ先生やポーン先生が怒ってくれた方が嬉しい。嬉しいっていうか,って思うんですよ。  M: うんうん。  K : それはどう思いますか。  M: あのー,何ですか,frequency,frequency 知ってる?  K : あ,その,怒る回数ってこと? しかし,マリ先生はポーン先生とは生徒を怒る頻度が違うと答えた。「わたし」の期待していたのとは違う回答である。そこで,「わたし」はさらに以下のように続ける。  K : それは,マリ先生にとって,マリ先生の,自分の仕事だと思いますか。  M: 怒る?  K : うん。  M: 怒る仕事?  K : 怒るっていうか,ま,それが,それだけじゃないですよ。それも,一つ,先生の仕事のひとつだと思いますか?  M: それを迷惑しない,させたくないですね。みんな迷惑,になるから,絶対に言いますね。でも,そんなにしゃべっても静かにしゃべったら大丈夫と思って。まあ,それくらい。しょうがないと思って。  K : そうそう,それでも,そうじゃなくて,先生の……だから,何ていうの,その注意をすること?生徒を怒ることも,先生の仕事の一部だと思いますか。  M: の仕事?  K : そうそう,仕事の一部?  M: そうそう。  K : だと思いますか。  M: みんなに迷惑と,先生も教えられないでしょ。みんなにもあんまり夢中できないですから。絶対言います。81髙井かおり/実践改善のための振り返りを「せめぎあい」の場にするために

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