早稲田日本語教育実践研究 第5号
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であり,日本語学習歴も異なるが,全員「総合日本語」科目でピア・レスポンスを経験している学習者である。当該コースでは「レポートを作成する」という目標が設定され,ピア・レスポンスによって改稿に取り組んだレポートが評価の対象となっている。5-1-2.調査項目と分析方法 アンケートでは選択式の回答項目を用意し,レポートを書くときにクラスメイトと話し合うことでよかったことは何かを問うた。アンケートの設問は以下の通りである。よかったことはなんですか。☑をしてください。□ レポートがもっとよく書けるようになった。……「プロダクトの完成度」□ 新しいことばを知った。□ 新しい文法がわかるようになった。        「活動のプロセス(技能面)」□ クラス以外でも,日本語で話せるようになった。□ 話し合いが楽しかった。□ 日本語で話すことに慣れた。 □ この授業が楽しくなった。     「活動のプロセス(社会面)」□ グループのメンバー。□ クラスメイトと仲良くなった。□ いろいろな考えを知った。□ 自分で間違いが直せるようになった。   「学習者のメタ認知能力の育成」□ 新しい考えが生まれた。その他 (英語でもいいです)【 (自由記述欄) 】 選択式回答項目の作成にあたっては,教師の成否判断は学習者のピア・レスポンスに対する評価と重なるのか,その関連性を見るため,ピア・レスポンスにおける教師の意義づけを分類した伊藤他(2015)を援用した。まず,伊藤他(2015)の「プロダクトの完成度」(以下,「プロダクト」)にあたる項目として「レポートがもっとよく書けるようになった」という項目を作成した。そして,ピア・レスポンスを通じてよりよいレポートを書くことがコースの目標となっていることから,「レポートがもっとよく書けるようになった」を選択した学習者は自己上達感を得た,選ばなかった学習者は自己上達感を得られなかったと考えた。その他の項目についても上記アンケートの設問で挙げたように「活動のプロセス(技能面)」(以下,「技能面」)に該当する項目として「新しいことばを知った」「新しい文法がわかるようになった」「クラス以外でも日本語で話せるようになった」を作成し,「活動のプロセス(社会面)」(以下,「社会面」)に該当する項目として「話し合いが楽しかった」「日本語で話すことに慣れた」「この授業が楽しくなった」「グループのメンバー」「クラスメイトとなかよくなった」を作成した。また「学習者のメタ認知能力の育成」(以下,「メタ認知」)に該当する項目として「いろいろな考えを知った」「自分で間違いが直せるようになった」「新しい考えが生まれた」を作成した。以上,「レポートがもっとよく書けるようになった」「その他」を除く 12 項目のうち学習者はどの項目を『よかった』と評価しているのか及び,選択された項目と自己上達感の有無との関わりを分析した。67伊藤奈津美・石川早苗・ドイル綾子・藤田百子・柴田幸子/ピア・レスポンスにおける教師の役割

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