□□ □□□□□□□□□□ □ □□□□□□□□□□□1□ □□□□□□□□2□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□3□ □□□□□□□4□ □□□□□□5□ □□□□□□ 学習者はまず,(1)教師の説明を聞いて活動の意義を理解し,話し合いの中で(2)言語的,非言語的方略で個人の意見や態度などを表出する(「外化」)。ここでの「外化」とは,「批判的思考を活性化させる」という学習者個人の認知的なプロセスに対し,発話やレポート作成,表情やジェスチャーなど,言語的,非言語的な方略によって,学習者の内面から外へと表現されるプロセスのことをいう。そして,個人の「外化」が集まり,(3)「場」が形成される。「場」とは言語的,非言語的方略で表出された個人の外化の総体を指す。「場」で得たものが,(4)個人に還元され,気づきや内省などのメタ認知が促され,改稿につながる。この過程が繰り返され,(5)最終稿に至る。教師はこの流れの中で,個人の「外化」の総体である(3)の「場」と,最終稿として「外化」された(5)のプロダクトを見て「うまくいった」と判断しているのに対し,「うまくいかなかった」と感じる場合の多くは,「場」に「外化」された(2)の個人の技能,属性,態度を見て判断していると考えられる。 しかし,本来ピア・レスポンスは協働により個人では成しえない成果を生むとされる活動であり,「個人」に注目すべきではないだろう。個人の「外化」は他者との関係性によって異なるものであり,常に固定されたものではない。したがって,目の前で表出されている「外化」がどのような関係性のうえに表出されたものかに注目すべきである。5-1.調査Ⅱの概要5-1-1.調査目的と調査協力者 調査Ⅱでは,学習者へのアンケート調査によって学習者がピア・レスポンスの何を評価しているか,またその評価要素と学習者の「レポートがよく書けるようになった」という自己上達感の有無に関連があるか, あるとすれば自己上達感を得た学習者がどの要素を評価しているのかを明らかにすることを目的として行った。 2015 年春学期終了時の 7 月,「総合日本語」科目の中上級・上級クラスの学習者のうち,調査協力に同意した学習者を対象とし,35 人から有効回答を得た。学習者の国籍は様々66早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/57―73図 1 ピア・レスポンスにおける学習プロセス5.ピア・レスポンスで学習者は何を評価しているのか
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