3 冨倉 教子【論 文】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 教室内での「話す」活動に対する学習者の消極的態度が見受けられるのには,様々な要因があると考えられる。例えば Burns and Joyce (1997)によると,学習者が読み書き中心の授業を受けてきたことや,学習者中心の授業に慣れていないこと(文化的要因)などを挙げている。また不安や学習意欲がない,といった心理的要因が関係しているとも述べている。そこで「話す」活動に対して,学習者の積極的参加を促進するのを目的で,点数による評価(例:80 点,100 点など)がなく,また自由な形式およびテーマで発表する機会(以下「自由発表」)を設けた。発表後,その活動に関する学習者の意見/感想を書面アンケートによって収集した。協力者は日本語中級レベルの学生 15 名である。そのアンケートから,「自由発表」を含め「話す」活動に対する協力者の前向きな姿勢や意欲が確認できた。また「自由発表」が言語学習に影響を及ぼした可能性も発見できた。 キーワード:自由発表,話す活動,文化的要因,心理的要因,自己決定理論 中級日本語レベルの授業において,学習者は勤勉で態度も良く,決して学習意欲がないわけではないにもかかわらず比較的受け身であり,「話す」―特にクラスで自分の意見を述べる,ということにおいて積極性が希薄である傾向があると感じている。そこで過去にパイロットとして自由な形式,テーマで発表する「自由発表」を設け,いずれも学習者から前向きなフィードバックを得た。また日頃欠席や遅刻が多い学習者が,自分の発表日には遅刻することなく授業に出席したり,学習者同士連帯感を深め,クラス全体の雰囲気が変わったり,といった言語活動以外の影響も見受けられた。そこで今回「自由発表」と言語学習,ならびに学習者に与える影響,効果を探るために当研究を行った。2-1.話す活動と学習者の背景理学的(感情的)要因があるとし,その文化的要因として以下のような例を挙げている。文化的要因 □ 学習とは教師の発話を聞くことであり教室で話すことではないという信念(Burns & ―日本語学習者の「話す」活動に対する影響と効果―要旨1.はじめに2.先行研究 Burns and Joyce (1997)は,学生の話す活動への消極的参加は,文化的,言語学的,心「自由発表」とモチベーション
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