7732311161113早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/57―73 合計19合計合計ている。単独の要素及び複数の要素の組み合わせを併せると,28 人中 21 人が「技能面」,「属性・態度」に言及していることから,このふたつの要素が『うまくいかなかった』と判断する際の重要な要素であると言えるだろう。表 6 教師が『うまくいかなかった』と判断する要素の組み合わせ技能面属性・態度1 要素社会面メタ認知(プロセス)技能面+属性・態度メタ認知(プロセス)+プロダクト2 要素技能面+社会面技能面+メタ認知(プロセス)技能面+属性・態度+メタ認知(プロセス)社会面+属性・態度+メタ認知(プロセス)3 要素社会面+メタ認知(プロセス)+メタ認知(プロダクト)4-3.考察4-3-1.『うまくいった』『うまくいかなかった』と感じた場合に挙げられた要素 これまで成否を判断する際に現れる要素について見てきたが,『うまくいった』場合と『うまくいかなかった』場合に挙げられた要素には顕著な違いが見られた。『うまくいった』『うまくいかなかった』という判断のもとになる要素を組み合わせからみると,『うまくいった』と感じた場合には,単独の要素では「メタ認知(プロダクト)」を判断要素として挙げた教師が最も多く,複数の要素では,「社会面」と「プロダクト」または「社会面」と「メタ認知(プロダクト)」の組み合わせを挙げる教師が多かった。単独の要素で「メタ認知(プロダクト)」を挙げた教師は,学習者に気づきや内省などの変化が起きていると感じた場合に『うまくいった』と判断していると考えられる。そして,複数の要素を挙げた教師は,話し合いの活発さや学習者間の関係性の構築(「社会面」)など,ピア・レスポンス中の学習者の様子・雰囲気と,その後に提出されるプロダクトやプロダクトにつながる過程である気づきや内省(「メタ認知(プロダクト)」)に関連を見出し,総合的に『うまくいった』と判断しているのではないだろうか。一方,『うまくいかなかった』と感じた場合には,判断要素として単独の要素を挙げた教師が過半数を占めた。中でも,「技能面」や「属性・態度」を挙げた教師が多いことから,『うまくいかなかった』と感じた場合,多くの教師がその要因を学習者個人の能力や属性・態度に求める傾向にあると言えるだろう。64
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