早稲田日本語教育実践研究 第5号
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伊藤奈津美・石川早苗・ドイル綾子・藤田百子・柴田幸子/ピア・レスポンスにおける教師の役割  2 つ以外の要素は先行研究で挙げられた意義づけの要素と重なっていたため,意義づけと成否判断には関連性があるということがわかった。成否判断の要素として確認された 2 つの要素のうち 1 つを①「活動のプロセス」の下位項目におき「活動のプロセス(属性・態度)」(以下「属性・態度」)とした。また,ピア・レスポンスの意義を理解するメタ認知能力を,②「学習者のメタ認知能力の育成」の下位項目におき,自己推敲力や気づきによる内省と区別し,それぞれ「プロセスのメタ認知」(以下「メタ認知(プロセス)」,「プロダクトのメタ認知」(以下「メタ認知(プロダクト)」と位置づけ再分類した(表 2)。① 活動のプロセス② 学習者のメタ認知能力の育成③ プロダクトの完成度(作文・レポートの改善) それぞれの要素に分類したアンケート回答例を以下に記述する。 「技能面」  ・「クラスの学生の性格や日本語レベルを掌握でき,活動がスムーズになったとき」  ・「ペアになった学習者に差があったとき(漢字力,語彙力)」 「社会面」  ・「こちらから何か促さなくても,活発に話合いが行われている」  ・「学生同士の関係性やクラスの雰囲気がよくなったと感じたとき」  ・「活発なやりとりが見られなかったとき」  ・ 「クラスの雰囲気に左右されることが多いため,うまくいく場合とうまくいかない場合との差が大きい。その調節が難しい」 「属性・態度」  ・「他国籍であること」  ・「パートナーから刺激を受けたという学生の様子を見たとき」  ・「大人しい,大学生ばかり,アジア系が多いなど」  ・「やる気がある人とない人が混在している場合」 「メタ認知(プロセス)」  ・「ピアの説明;目的を説明した」61表 2 教師がピア・レスポンスの成否を判断する要素技能面(日本語能力)社会面(学習者間のコミュニケーション,学習者同士の関係性の構築)属性(国籍,性格,得手不得手)・態度(意欲)プロセスのメタ認知(ピア・レスポンスの意義理解)プロダクトのメタ認知(自己推敲力,気づきによる内省,多様な視点)

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