早稲田日本語教育実践研究 第5号
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沖本与子・高橋雅子・伊藤奈津美・毛利貴美・岩下智彦/CJLにおける中級から上級前半学習者の自己評価 CDS の全 42 項目に対する回答の平均値を 0.5 点刻みで表しており,縦軸に平均値ごとのこの値は,0.967 と高い信頼性が示された。 次に,本調査の結果をヒストグラムで示したのが図 2 である。この図では,横軸に学習者の人数が表されている。つまり,図の中央,平均点が 4.5 から 4.9 の学習者は,約20 人,5.0 〜 5.4 の学習者は,約 30 人いることを表している。図 2 CDS 平均値のヒストグラム(N=149)(点線は平均値 5.3 点を表す) 前述のように,今回作成した CDS の各選択の記述は「1.全然できない」から「7.問題なくできる」の 7 件法を採用しており,図 2 のヒストグラムからは,今回の調査協力者の CDS 平均値が「5.少しできる」から「6.だいたいできる」にあたる者が多い一方で,「2.ほとんどできない」,また「7.問題なくできる」と回答した学習者は極めて少ないということが分かる。仮に調査協力者全体の平均値が極端に低い値や高い値を示していたり,平均値が「2.ほとんどできない」や「7.問題なくできる」の者が極端に多い結果が示されていたという結果であれば,学習者の言語習熟度にまったく合っていない懸念が出てくる。しかし,今回の調査協力者の CDS 平均値が「5.少しできる」から「6.ほとんどできる」の前後になったことから,今回使用した CDS が今回の調査協力者の自己評価を示す指標として一定の有効性を持っているといえよう。 一方で,図 2 で示したヒストグラムを見ると,正規性が保たれておらず,分布が全体的に右側に偏っている 1)。つまり,本調査で使用した CDS は,本調査の協力者にとっては,易しすぎたといえる。この理由は今回使用した CDS に総合 4­6 で学ぶ中級から上級前半の学習者にとっては易しい自己評価項目が入っているからであると考える。これは作成にあたって,今後,初級〜中級レベルの学習者を調査対象とすることを視野に入れ,初級相当である A1,A2 の項目もリストに含めたためである。この点で,調査対象者のレベルを考慮した適切な項目作成と選択が今後の課題であるとわかった。3-2.CDS レベル別・技能別の基本統計量 次に,レベル別・技能別での CDS による自己評価の違いを見るためレベル別・技能別に平均値と標準偏差を算出した結果を表 4 に示す。CDS の得点範囲は,4 技能をまとめた平均値では,2.26 から 6.86 であり,各技能別では 1.2 から 7.0 であった。 技能別に見ても,平均値はレベルが上がるにつれ上昇しており,高いレベルにいる学習45

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