早稲田日本語教育実践研究 第5号
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CJL の全レベルで CDS を活用することを計画しているため,CJL のレベルの範囲に合わ CJL では,4 技能を総合的に学ぶ日本語科目として初級から上級前半までの全 6 レベルSurveyMonkey を利用した WEB アンケートを実施した。調査協力者の募集に際しては,参照レベル別の項目数は,今回の調査協力者が中級〜上級前半レベルの学習者を対象としていたことから,特に中級の評価項目に比重を置き,「基礎段階の言語使用者レベル」である A1 は 1 項目,A2 は 2 項目とし,「自律した言語使用者レベル」の B1 および B2 は各 3 項目,「熟達した言語使用者レベル」である C1 は 1 項目とした。また CJL の中級から上級前半の総合日本語の学習ではレポート作成など「書く」活動に重点を置いているため,「書く」のみ本研究グループによるオリジナルの 2 項目を別途追加した(資料 1 参照)。なお本研究では,調査協力者を中級から上級前半の学習者に設定したが,学習者がどのレベルに自分の能力を自己評価しているかレベル全体から見るため,そして,今後将来的にせ,CEFR ならびに JF スタンダードの A1 〜 C1 にある能力記述文を抜粋し,CDS を利用した。 回答方式は,先行研究(島田他 2006,2009)を参考とし,「1.全然できない」「2.ほとんどできない」「3.あまりできない」「4.どちらでもない」「5.少しできる」「6.だいたいできる」「7.問題なくできる」の 7 件法とした。また,CDS の質問項目の後に,母語や所属,履修科目などのフェイスシートとなる質問項目を加えた。これら全ての文章に中国語と英語の翻訳文を併記し,2 名の調査協力者に対する予備調査を実施後,内容や表現の修正を行い,完成版とした。2-2.調査手順からなる総合日本語が開講されている。本調査は,2016 年度春学期の学期開始時(2016年 4 月 12 日〜 5 月 11 日)に,中級〜上級前半にあたる総合日本語 4(以下,総合 4),総合日本語 5(以下,総合 5),総合日本語 6(以下,総合 6)の 3 レベルの履修者を対象に中級〜上級前半レベルの授業が終了後,各教室にて調査者が調査についての説明を書面と口頭で行った。その際に調査協力について承諾し,同意書を提出した調査協力者に WEBアンケートのリンクを記載した資料を手渡し,回答を依頼した。調査協力者は個別にオンラインでアンケートに回答した。2-3.調査の対象者 本調査が対象とする CJL 総合 4­6 の履修者数は,2016 年度春学期開始時点で,総合 4が 220 名,総合 5 が 160 名,総合 6 が 80 名であった。調査協力の同意を得た 208 名から回答があり,そのうち不備のあった者のデータを除き,有効回答 149 名分を分析対象とした。分析対象とした調査協力者の各レベルの内訳は,総合 4 が 67 名,総合 5 が 54 名,総合 6 が 28 名で,表 1 に示す通り各レベルにおける学習者の母語の構成比に大きな差は見られない。この学習者の母語および表 2 に示した所属および年齢を見ると,調査対象とした学習者は,多様な背景を持っていることが分かる。前学期に CJL に所属していた学習者の多くは総合 4 の履修前には総合 3 を,総合 5 の前には総合 4 を履修するといったように,段階的に総合日本語のレベルを向上させ,学習をしてきた学習者も含まれる。43沖本与子・高橋雅子・伊藤奈津美・毛利貴美・岩下智彦/CJLにおける中級から上級前半学習者の自己評価

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