学独自のプレースメントテストの場合,受験する学習者の日本語能力幅は大きくなり,高い相関性が示されている(島田 2006)。これは客観テストと CDS の関連性の検討においては,客観テストの特性や調査協力者の能力分布による影響を考慮しなければならないことを示唆している。 また,J-CAT および JLPT でも受験者に対して自己評価調査を実施しており,それに基づいて独自の Can-do リストを作成し公開している(「J-CAT CANDO レポート」および「日本語能力試験(JLPT)Can-do 自己評価リスト」)。例えば,JLPT の受験者は客観テストの結果と Can-do リストによる自己評価を経て,それぞれのレベルの合格者が日本語を使ってどのようなことができるか,というイメージを掴むことができる。 このように,客観テストと関連した自己評価調査についての先行研究も多く存在している。1-4.本研究の課題と目的 前項のように,CDS 調査を行った研究では,当該教育機関における現行のレベル設定の妥当性が検討され,レベル別に具体的な「できる」言語行動が示されている。しかしながら,CJL において複数のクラスを対象とした CDS による調査ならびに検証はこれまで行われていない。CJL においても CDS 調査を実施し,客観テストである J-CAT との関連性や CJL の各レベルと CEFR のレベルとの関連付けを示すことで,現在の CJL の学習者の状況を把握し,今後の教育カリキュラムを考える上での有効な資料となるものと考える。なお,前述のように CJL の学習者は J-CAT の結果・テキスト・シラバスなどを用いて,レベル判定や授業の自己選択をしているが,これらの要素の中で,J-CAT を参考にしている学習者が多いのではないかと想定している。 以上を踏まえ,本研究では,CJL に在籍する学習者の自己評価による能力レベルならびに客観テストの結果のデータを収集し,現状を把握することを目的として,CDS を用いたアンケート調査を実施した。主な研究課題は,以下の 3 点である。1)CJL の中級〜上級前半レベルにおいて CDS 調査の結果はどのような分布をしているのか。2)CJL の中級〜上級前半レベルの学習者が行った CDS 調査の結果は CEFR のどのレベルに「できる」と自己評価したか。3)CDS と J-CAT の相関はどの程度か。2-1.CJL 学習者を対象とした CDS 調査票の作成 本研究で使用した CDS は,「みんなの Can-do サイト」における CEFR 及び JF スタンダードの CDS から CJL の教育内容や学習目標と関連がある項目を抜粋し,必要に応じて表現などに一部修正を加えた。JF スタンダードでは,言語能力や言語活動のカテゴリーや,すでにある「Can-do」を参考にしながら,各教育現場に合った「Can-do」を作成する必要性を説いている(JF スタンダード知識編)。この例にならい,特に CJL の学習者が大学や大学院などに所属する学習者が多いことを考慮し,大学教育や研究活動に関わる事項を優先的に選択し,ビジネス関連の項目などは省き,CJL オリジナルの CDS を作成した。 作成した CDS は,全 42 項目(読む 10 /書く 12 /聞く 10 /話す 10)であり,CEFR42早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/39―562.調査の概要
元のページ ../index.html#46