く,次にⅢ,Ⅱ,Ⅴの順序で,行われていた(すべて p<.01)(丹羽・丸野 2010:204-205)。丹羽・丸野(2010:206-207)は,レベルⅡの自己開示は,もうすでにある程度知っている相手には,苦労話は自慢に聞こえ,嫌味に感じられる可能性があるので,それよりは,それほど深刻ではないが,開示者の性格特性の未熟な部分を直接さらけだすことで(レベルⅢの自己開示),相手に自分のことをより知ってもらい,さらなる関係性の発展につなげることができるだろうと述べている。初対面の人と親しい友だちに対する表層的な自己開示の違いについては,初対面の人に対してより親しい友だちに対して多く行われていたが,相手との関係性が親密になると,状況によっては,深層的な自己開示を抑制し,あえて表層的な開示を行うこともあると考察している。 さらに,丹羽・丸野(2010)は,自己開示の深さが親和動機と,どのような関係にあるのかを検討するために,各下位尺度得点と親和動機得点の間の相関係数を算出し,無相関検定を行なった。その結果,他者と親密になりたい人ほど,自己開示をより多く行っているが(ps<.05),初対面の人に対してのレベルⅣの自己開示は,親和動機とそれほど関係ないことが示された(有意差なし)。また,自己開示の深さと心理的適応度との関係を検討するために,各下位尺度得点と充実感得点,自尊感情得点,孤独感得点とのそれぞれの相関係数を算出し無相関検定を行なった結果,毎日充実した気持ちで生活し,自分を肯定的に評価できていて,1 人ぼっちではないと感じている人ほど,初対面の人に対してもレベルⅠやⅡの表層的自己開示を行うが(ps<.05),レベルⅢやⅣの自己開示の程度は,それほど関係しなかった(すべて有意差なし)。一方,親しい友だちに対しては,深さのレベルに関係なく自己開示をより多く行っている人ほど孤独感をそれほど感じていないことが示された(ps<.01)(丹羽・丸野 2010:205-206)。 武田・前田・徳岡・石田(2012)は,丹羽・丸野(2010:198-199)の自己開示の尺度や杉浦(2000:355)の親和動機尺度を用い,被開示者を「知り合ったばかりの友人」「これから親しくなりたいと思う友人」「親友」の 3 種類の同性の友人を設定し,友人との親密度,親和動機,自己開示の内容の深さの 3 要因が,大学生の自己開示量に及ぼす影響を検討した。その結果,親友に対する自己開示は,知り合ったばかりの友人やこれから親しくなりたい友人に対する自己開示よりも多く,友人関係の親密度の程度が自己開示量に影響を及ぼすことが示された。さらに,親密度の効果は自己開示の深さによって異なり,レベルⅠでは,親密度の効果の差は見られなかったが,レベルⅢやレベルⅣのような深いレベルでは,親友に対する自己開示が最も多いだけでなく,これから親しくなりたい友人に対する自己開示が,知り合ったばかりの友人に対する自己開示よりも多いという結果であった。親友に対する自己開示は,レベルⅠが,最も多く,次に,レベルⅢとなり,レベルⅡとⅣが最も少なかった(レベルⅡとレベルⅣの間に有意差は見られなかった)。これから親しくなりたい友人と知り合ったばかりの友人に対する自己開示では,レベルⅠが最も多く,次いでレベルⅡとⅢとなり,レベルⅣが最も少なかった(レベルⅡとレベルⅢの間に有意差は見られなかった)(武田・前田・徳岡・石田 2012:105-106)。2-2.日本語教育の場での自己開示 次に,日本語教育で,実際に自己開示と作文をテーマとし研究を行ったものについて述25多賀三江子/初級日本語クラスでの「個人化作文」における自己開示の深さの分析
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