早稲田日本語教育実践研究 第5号
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冨倉教子/「自由発表」とモチベーション ト「自分に発表ではなく,クラスメートとの話がもっと多いなら,いいと思う。」や「はっぴょうじかんをふやしてほしい。」から,「話す」ことに対する積極的な姿勢も垣間見ることができた。5-3.「自由発表」の今後 以上「自由発表」後のアンケートや過去のパイロットから,「自由発表」は学習者の言語活動やそのモチベーションに影響を及ぼすものと考えられる。そのため今後もコースワークの一部に加え,他の活動や学習と相互に作用し合えるものとして位置づけることを提案したい。また今後この自由発表をクラスの成績に含めるとした場合,文法や発音といった言語活動に着目したものだけでなく,発表内容(創造性や独創性,思慮の深さなど)を評価する必要があると考える。さらに可能であれば,一度の発表に止まらず,学習者に何度か発表する機会を与え,1 回目とそれ以降で「何が」変わったかではなく,「どのくらい」変わったか,という“結果”ではなくその“過程(どのくらい努力したか,成果が見られたかなど)”を評価する必要もあると考えられる。 好きなことを自由に発表するとき学習者は困難と思わず,同時に日本語を学習したと回答している。またこの自由発表の後で行ったアンケートからは,日本語を「話す」という活動に対して前向きに捉えていることが見受けられ,「自由発表」が今後の学習継続意欲へと導いたケースも確認された。 一方今回のデータ収集,分析方法も含め,学習者の文化的,心理的背景(「不安」「モチベーション」)と言語学習及び言語習得との関係はさらなる調査が必要である。また各協力者の出身国や受けてきた教育環境など,それぞれの国や社会といった単位から個人のレベルまで,幅広く文化的,心理的要因を掘り下げていく必要もあると考えられる。 さらに教師と学習者との関係性,効果的な学習環境の構築,学習者にとって言語習得活動に効果のある評価の仕方など,今後もさらに研究を深め追求していきたい。参考文献Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. New York: W. H. Freeman.Burns, A., & Joyce, H. (1997). Focus on Speaking. Sydney: NCELTR.Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior. New York: Plenum.Elbow, P. (1998a). Writing with Power: Techniques for Mastering the Writing Process. New York, NY: Oxford University Press.Elbow, P. (1998b). Writing without Teachers. New York, NY: Oxford University Press. Ellis, R. (2015). Understanding Second Language Acquisition. Oxford University Press.Harper, J. K. (2015). “Combining Movie Viewing and Guided Freewriting to Enhance Student Attitudes in a University Academic Writing Class.” The Language Teacher (JALT) 39:4, 3-7.Jones, B. D., Llacer-Arrastia, S., & Newbill, P. B. (2009). Motivating Foreign Language Students Using Self-Determination Theory. Innovation in Language Learning and Teaching 3:2, 171-189.196.おわりに

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