早稲田日本語教育実践研究 第5号
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3. 派遣前教育の概要と「つながり」づくり SEND学生は、渡航前からSNSなどを通じて派遣先の学生と交流を開始し、現地ではさらに親密になることが多い。親しくなればなるほど、彼らに貢献したいという気持ちは強まり、授業や文化紹介活動を更に充実させたいという動機は高まる。その結果、派遣前に準備した内容では物足らず、また、さらに現地学生のニーズに沿う内容に急遽、授業案や文化活動の内容を再検討し、調整するチームもある。 表3に示した「海外実習」の概要からも分かる通り、授業は前半と後半で大きく分かれる。というのも、個々の学生の派遣先が決定するのは、第6回講義を過ぎた頃のことであり、講義開始時には、派遣先もチームのメンバーも未定だからである。さらに、前半と後半の授業目的に至るプロセスでは、SENDにおけるさまざまな人々の間に「つながり」がつくれるように授業を設計している。 3.1□ 派遣前教育の概要 まず前半の授業について述べる。この時期の授業目的は、派遣のイメージづくりと仲間づくりである。SENDプログラムの派遣の実際は、どの学生も当初は「よくわからなかった」と答える。一般的な短期語学留学とは異なり、独自性の高いプログラムであるため、派遣中の様子が想像しにくいのである。そのため、前半の授業では、過去のさまざまな派遣を紹介し、それをふまえて「自分達だったらどうする?」と考える活動を行う。また、授業を行うためには、どういうプロセスで、なにを準備しなければならないかも学ぶ。 □ この時に活躍してくれるのが、過去の派遣メンバーたちである。SENDの派遣に思い入れが強いメンバーほど、次のメンバーに自分の経験を語りたいと協力を申し出てくれる。このように、過去のメンバーから次のメンバーへと続くバトン、これが一つめの「つなが り」である。また、この「つながり」の中には、コースナビに残された先輩の日報□□□ もある。派遣先での一日の終わりに書き残した記録やアドバイスが、web上で次の学生へと受け継がれており、リアルな情報提供のツールとなっている。 更に、協定大学の教員を招聘して講義や指導をお願いすることや、交換留学生として早稲田で学ぶASEANの協定大学所属学生をゲストスピーカーに招くこともある。派遣先の表3□ SEND派遣前教育の概要(GEC科目「海外実習」の場合/全15回講義) 時期 授業目的 《派遣先の活動イメージと仲間づくり》 及び ・□ 文化活動の企画案プレゼンと検討 内容 ・□ 授業の作り方を考える 備考 *ゲストスピーカー* ・□ 協定大学教員の講義 ・□ 派遣OBOGによるプレゼン ・□ ASEAN交換留学生によるプレゼン 後半(第8〜15回講義) 《派遣先での活動企画づくり》 ・□ 派遣先地域と派遣大学の詳細調査 ・□ 文化活動&授業企画案プレゼンと検討 □ □ □・ 第14or15回に航空券や保険等の 派遣前オリエンテーションを開催 ・□ 各種備品申請と購入手配 ・□ 各自の渡航準備 219年度報告 前半(第1〜7回講義) 派派遣遣先先申申請請とと□□派派遣遣先先のの決決定定□□

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