早稲田日本語教育実践研究 第5号
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□早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/199―260 □ 本学での受け入れは、参加者の日本語教育の実践能力向上に寄与することに主眼を置いたことから、早稲田大学からの参加者を「研修生」、受け入れ期間を「研修(期間)」と呼ぶ。そして、受け入れには以下のような工夫をした。□□ 第一に、研修生の実習内容は、授業見学と希望する学生を対象にした模擬授業を中心に据えたということである。その理由は、本学では全教員に学生からの厳正な授業評価が課せられているため、研修生が正規のクラスを担当することは許されなかったためである。その結果、模擬授業を実施することで、実践の機会を作った。□□ 第二に、できる限り研修生が興味のあるトピックや研究に関わりのある日本語レベルを担当してもらえるよう、来星前に両大学の担当教員が研修生の専門や希望をもとに模擬授業の内容について話し合い、文法項目やトピックなど模擬授業の方向性を決定した。それにより、配属するコースを選定した。□第三に、いずれの実践も、それぞれのレベルに応じた適切な語彙や文型の使用を基本として実践できるよう、予め準備されてきた教案や教材に、修正を重ねていった。□□ 第四に、授業を目的意識を持って見学、あるいは、参与観察できるよう、振り返りシートに見学を通して気付いた点や感想などを記入してもらった。□第五に、模擬授業への参加者を少しでも増やすよう、来星前に模擬授業のポスターを作成してもらい、予め広報を行ったり、研修生が講義に出席して直接呼びかけを行える機会を作った。さらに、模擬授業を学生が比較的参加しやすい大学の中間休みに位置づけられるよう受け入れ日程を調整した。□□□□□ 受け入れの成果と課題□□ 上述したような工夫を凝らした結果、以下のような成果がもたらされた。□□ 第一に、研修前半には配属コースを中心に授業見学や教務の補助、後半に模擬授業を行なったが、それに先立って授業見学を行うということには多大な意義があった。模擬授業で対象となる日本語学習者のレベルや特性を知るとともに、本プログラムに求められる教師の役割を理解することが可能となったからである。□□ 第二に、できる限り研修生の希望を踏まえて配属するコースや模擬授業のトピックを決定したかったが、希望どおりにできないこともあった。例えば、ある研修生から、上級コースである口語表現についての模擬授業を行いたいとの希望を受けたが、こちらでは非漢字圏の学生への文字教育が重要課題となっていたため、模擬授業の内容もそれに合わせて変更してもらった。逆に、日本語の授業より、文化活動により興味があった研修生を受け入れた際には、その希望を尊重して文化活動を行ってもらうこともあった。そのような調整はあったものの、できる限り研修生の意向を汲んだ。その結果、いわゆる日本語の授業(「文字の導入」「接続詞」「オノマトペ」「スピーチスタイル」)や文化活動的な授業、例えば、「ヘアスタイル紹介」「ファッション紹介」「紙芝居」「手巻きずし作り」「ちぎり絵」など幅広いトピックで実践してもらうことができた。□□.早稲田大学の学部生・院生の受け入れ□□□□□□□ 受け入れの工夫点□212

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