早稲田日本語教育実践研究 第5号
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早稲田大学から3回、学生を迎えた過去3年間、本学において SEND プログラムが確かに成功であったと私は確信を持って言うことができます。 2016 年の SEND インバウンド・プログラム直後に行われたデ・ラ・サール大学の学生への先ごろの調査において、学生全員が、以下の2つの主な要因から、この SEND プログラムを本学において継続すべきであるということに賛成しました。それらは彼らの国際研究学科日本研究専攻の学生としてのニーズに沿ったものです。 (1)□ 日本の文化と日本人をより良く理解するため (2)□ 自分たちの日本語能力を向上させるため 学生たちの回答によれば、このプログラムを通して彼らは、自分の学習において、より意義深い旅路を見出すことができたとのことです。正直なところ、私どもの学生のほとんどは初め、日本文化、特にアニメ、マンガ、J ポップ、日本のドラマなどの関心からこのコースを取りました。彼らは日本語学習に興味を持ち、将来もっとわかり、使えるようになりたいと願ったのです。しかし、クラスで日本語を学び始めると、彼らのほとんどが苛立ちを覚えます。日本語が簡単ではないことがわかるからです。たくさん覚えなければならないことがあります。漢字は複雑です。クラスで取り上げることについて、彼らが見たアニメやドラマ、彼らが聞いた歌では、聞いたことがないと言うのです。 国際研究学科日本研究専攻に属する私どもの学生は日本語 21 単位と英語で指導される日本政治、日本歴史、日本文学、日本文化、日本政治政策などといった科目から数単位が必修となっています。 本学には、日本語ネイティブの教師がいないので、ネイティブと接する機会は極めて限られています。 調査結果によれば、早稲田の学生と、くつろいだ雰囲気のもと接する機会は、学びを、より楽しく、やる気を起こさせるものとしたとのことです。 より楽しくというのは、私どもの学生は、自然で脅迫的でない方法で、物事を学ぶ傾向があるからです。やる気を起こさせるというのは、クラスで学んで知っている言葉・表現は限られているとはいえ、早稲田の学生に、自分の言いたいことを伝えることができ、双方向のとても意味のあるコミュニケーションを持つことができたので、達成感を得たからなのです。彼らは失敗を恐れず、会話を続けるため一生懸命努力したのです。クラス活動の合間に、私は学生にインタビューなど他の活動を行わせました。それを通して、彼らは文化についても学びました。 □ 次は、言語と文化の学習がどのように同時に起こるかの例です。 私どもの学生は散歩という言葉の意味は知っていますが、それがどうして趣味なのかということが理解できませんでした。彼らは散歩に別の意味があるのかと思いました。私どもの学生で、趣味として、散策し歩き回る者は誰もいないからです。フィリピンの気候は暑く、特に私どもの大学のある地区の空気汚染はひどいからです。 他方、早稲田の学生も、フィリピン式の生活または文化について発見しました。たとえば、可能形を取り上げたすぐあとの授業で、クラス活動を持ちました。私は早稲田の学生に、運転手、教師、警備員、ウェイトレス、忍者など、特定の職業を割り振りました。他方、私どもの学生には、運転ができ208早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/199―260 日本語抄訳 (1) デ・ラ・サール学生:趣味は何ですか。 早稲田学生:散歩することです。

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